リスク認知におけるセロトニンの効果の解明:5-HTTLPRのSキャリアは不確実性ではなく、主に結果の大きさと関係している (MIllroth et al., Behavioral Neuroscience, 2017)
みなさんこんにちは。
微かに混じり合う教育と心理学とアートについて考えていますじんぺーです。
今日も論文を読んでいきます。
リスク認知におけるセロトニンの効果の解明:5-HTTLPRのSキャリアは不確実性ではなく、主に結果の大きさと関係している (MIllroth et al., Behavioral Neuroscience, 2017)
背景
■sキャリアはllホモ接合体よりもリスク回避的
・さまざまな異なるタスクにおいても当てはまる
・「リスク回避」という概念は、文献では曖昧に使われており、結果の分散に対する回避、つまり不確実性そのものに対する否定的な反応を意味するか、あるいは、より好ましくない結果の非自明な確率を含む見通しに対する回避、低い効用を持つ事象に対する反応を意味するかのどちらか
・5-HTTLPRの短い対立遺伝子は、神経症の増加や恐怖に対する反応性の増加と関連している
・Sキャリアは不確実性に対しては、H1と一致して回避的に反応することが示唆
方法
■参加者:18歳から57歳までの女性243名、男性91名(M=24.45、SD=5.46)
■5-HTTPLR
・短い対立遺伝子(s)キャリア(n=215)をグループ化し、長い対立遺伝子(ll;n=118;Leschら、1996)のホモ接合体
■尺度
・支払い意欲(Willingness to Pay)
・リスク傾向尺度(RPS)(Nicholson et al)
結果
■WTP:支配的な効果は対立遺伝子の主効果
・H2で示唆されているように、sキャリアはプロスペクトのタイプに関係なく、llキャリアよりも一貫して高いWTPを報告
■対立遺伝子(s-またはll-キャリア)を被験者間変数とし、プロスペクトのタイプ(確実、不確実、または曖昧)を被験者内独立変数としたベイズ反復測定ANOVA(JASP v.0.8.1.1.1のデフォルト設定を使用;JASP Team, 2017)
・データによって最もよく支持されるモデルは、対立遺伝子とプロスペクト・タイプの両方の主効果(BFm = 20.12, BF10 > 1,000)を含む
・H2 の支持率は 16.2(5.67/0.350)、不確実な利益を伴う見通しについては、H2 の支持率は 1,000 以上(47.08/0.030)、曖昧な利益を伴う見通しについては、H2 の支持率は 670.3(20.78/0.031)
■sアレルを持つ人は、llホモ接合体(M = 25.80, SD = 5.02)に比べて、日常生活でのリスクテイク(M = 27.09, SD = 5.23)がわずかに多いと報告
▶プロスペクトのタイプが確実、不確実、曖昧のいずれかであるかどうかに関係なく、プロスペクトに対してより多くの対価を支払うことを望んでいる
・リスクを伴う日常的な行動を促すのは、様々な結果の確率の計算ではなく、リスクを伴う行動に従事したことによる肯定的な経験に対する強い反応であると仮定するならば、s-キャリアーの方がより現実的なリスクを取ることを報告していることは、H2と一致
コメント
これまでの「Sキャリアは不確実性をより回避」するという通念?に一石を投じるような研究?ベイズ分散分析の説明、書き方が分かりやすくて、もし使う時が来たらこの論文に戻れるようにここに書いておく。「s-キャリアーの方がより現実的なリスクを取る」というのはもしかしたら、芸術文脈(自分が危機に瀕さない不確実性を含む)で使えるかもしれない。
論文
Millroth, Philip, Juslin, Peter, Eriksson, Elias & Agren, Thomas. (2017). Disentangling the Effects of Serotonin on Risk Perception: S-Carriers of 5-HTTLPR Are Primarily Concerned With the Magnitude of the Outcomes, Not the Uncertainty. Behavioral Neuroscience, 131, 421-427. https://doi.org/10.1037/bne0000209