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音楽におけるネガティブ感情の楽しみ:連想ネットワークによる説明 (Schubert, Psychology of Music, 1996)

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みなさんこんばんは!

教育と心理学について考えているじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

昨日の論文はこちら▽

 

 

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さっそくいってみましょう。たまには、少し古典目のものを。 

 

音楽におけるネガティブ感情の楽しみ:連想ネットワークによる説明 (Schubert, Psychology of Music, 1996)

目的

ネガティブな感情を喚起する音楽がなぜ楽しいものになりうるのか、そのメカニズム論的説明を提示する

 

音楽における否定的感情

■音楽における否定的な感情は快感を与えることができるということは一般的に合意される

・感情論者と呼ばれるいくつかの理論家は、私たちは音楽の熟考の間に動作する "美的感情 "の特別なセットを持っているので、したがって、経験されている否定的な感情は本当の感情ではないことを提案

・認知主義者は、私たちは全く感情を呼び起こすような音楽を楽しまないが、感情は音楽の構造の中に含まれていると認識しているので、本当の感情は経験されないので、再びパラドックスが解決されると提案

→感情論者や認知論者は、そのプロセスに関与しているかもしれないというメカニズム論的な説明をしていない

 

スキーマ理論

■スキーマ理論

・Mandler (1984)によると、情報とスキーマのミスマッチの結果として、感情的な覚醒が発生

・予期しない音楽的事象が覚醒を生み出すというLeonard Meyer (1956)の理論と一致

・GaverとMandler ( 1987)は、否定的で激しい感情の高まりは、音楽とスキーマのかなり高度なミスマッチ(つまり、音楽の既存のスキーマによるうまくいかない適合)の結果であると主張することによって、この概念をさらに発展

→なぜネガティブ感情が好かれるべきなのかは説明していない

■覚醒が快感であることを前提としたBerlyneの心理生物学的理論(1971)を組み合わせる

・Berlyneの論文の詳細な再検討の中で、Martindale (1984, 1988)は、活性化は日常的な文脈では必ずしも快感であるとは限らないが、美的な文脈では快感であると提案

・音楽に反応する感情は、否定的であろうと肯定的であろうと、それが美的文脈の中にあるために、常に好まれることになる

 

連想ネットワークモデル

■単純な単位(またはノード)間の相互接続(またはリンク)に基づくモデルを表す広義の用語

・例としては、セマンティックネットワークやコネクショニズム

■セマンティックネットワーク

・命題関係をモデル化するために用いられる

・ノードは、主語や述語などの単一の概念を表す

■コネクショニストモデル

・コネクショニストモデル(ニューラルネットワーク)は、通常、生物学的に妥当な人間の認知モデルをある程度提供するだけでなく、事実上、人間の思考動作の一部に類似した、実現可能なコンピュータシミュレーション

・ニューラルネットワークは音楽現象のモデリングに適している(Loy, 1991)

 

音楽への適用

・現在の連想ネットワークモデルでは、音楽的な刺激は単一のノードで表現

・Bower ( 1987)は、感情はノードとして表現することができることを提案

・ネットワークは、入ってくる刺激が美的なものか非美的なものか(「日常的なもの」)を検出する何らかの方法を必要とする

→解離ノードを導入することで、これらの様々なコンテキスト(美的または非美的)を説明することができる

・入ってくる音楽が何らかの符号化された否定的な感情情報を含んでいると仮定すると、適切な否定的感情ノード(またはノード)をアクティブにする

・通常の状況では、現在アクティブになっている負の感情ノードは、不愉快ノードをアクティブにするが、聞き手は(意識的にも潜在意識的にも)文脈を認識しているので、解離ノードも活性化され、不快中枢を無効にする

 

コメント

連想ネットワークや各ノードの活性不活性を用いて、美的体験におけるネガティブ感情の立ち位置を説明したシンプル?なモデル。美的文脈において、ネガティブ感情が知覚されても抑制されて、不快のノードに結びつかない、というのはなるほど、その通りだと思った。より新しいモデルもたくさんあるけど、このような古めのモデルも見ておかないとなあと思う今日この頃。

 

 

論文

Schubert, E. (1996). Enjoyment of Negative Emotions in Music: An Associative Network Explanation. Psychology of Music24(1), 18–28. https://doi.org/10.1177/0305735696241003