音楽と詩の表現意図、曖昧さ、美的体験 (Margulis et al., Plos One, 2017)
みなさんこんにちは。
微かに混じり合う教育と心理学とアートと。じんぺーです!
今日も論文を読んでいきます。昨日の論文はこちら▽
音楽と詩の表現意図、曖昧さ、美的体験 (Margulis et al., Plos One, 2017)
結論から言うと、作曲家や作者の意図に関する中立的、肯定的、否定的な情報が先行して提示された30秒間の曖昧な音楽や詩の抜粋を聴取した結果、意図が肯定的な情報と対になった楽曲は幸福感があり、否定的な情報と対になった楽曲は悲しさがあった(ただし、意図の条件によっては、音楽の楽曲の方が詩の楽曲よりも幸福感があった)。
背景
■曖昧さ、つまり複数の解釈を維持する能力は、芸術の中心的な特徴として認識されている
・視覚領域の研究では、曖昧さが芸術的評価を高めることを示唆するものもあれば、中程度の曖昧さが好ましいことを示唆するものもあり、また、曖昧さを減らすか排除すると芸術的評価が高まることを示唆するものもあり、相反する知見が得られている
・参照タイトルや文体表現などの要素を用いている
■美的鑑賞はまた、表現的解釈、つまり芸術家の感情的な意図や伝達的な意図についての仮定にも依存
・視覚芸術 (Leder et al., 2004; Leder & Nadal, 2014) や音楽 (Bratticco et al., 2009: 2013) に特化した美的鑑賞のモデルが生成
・音楽と詩を含む他の領域の美的体験を表現するために最も一般的に用いられる形容詞を比較しているが、特に音楽と詩の間には、物語的なプロットがないことや、感情を伝えるために音に依存していることなど、両者に共通する特徴についての推測につながっている
■音楽と文学における情緒的影響を支える共通のメカニズムがあるかどうかという問題を扱った (Omigie, 2015)
・最も可能性の高い候補として、想像共感と予測過程を挙げた
・読書中に感情と共感に関連する脳構造が活性化されることを示す神経イメージング研究は、フィクションのフィーリング仮説につながっている
・音楽についても同様の理論が存在し、SteinbeisとKoelschの研究では、共感に関与する脳領域が、コンピュータではなく人間のアーティストが作曲したと言われた音楽によってより強く活性化されたことが示された
方法
参加者:心理学クラスから募集した118名の学生(男性37名)
材料:音楽や詩などの表現が曖昧な部分を主な刺激として選択
説明文:肯定的な意図(例:作者/作曲者はこの詩を書いて、彼の愛への情熱と献身を表現した)、否定的な意図(例:作者/作曲者はこの詩を書いて、家族の死への追悼を表現した)、中立的な意図(例:作者/作曲者はこの詩を書いて、さまざまな書き方を試した)を伝えるために、音楽と詩の抜粋について説明を書いた
デザイン:ポジティブ、ネガティブ、ニュートラルな音楽と詩の抜粋を、ポジティブ、ネガティブ、ニュートラルな意図の説明とともに体験
手続き:意図の説明が画面上に表示されることから始まりました。次に、説明文が画面に表示されたままの状態で、詩や音楽の抜粋の録音が再生された。最後に、5つの質問(幸せ・感動・悲しみ・意図や状況との一致度・楽しめたか)が同じ順番で提示された
結果
・音楽(M = 3.87、SE = 0.12)は、詩(M = 3.11、SE = 0.11)よりも有意に幸福であると評価され(t(15.6)= 3.24、p = 0.005)、音楽(M = 3.21、SE = 0.11)は、詩(M = 3.75、SE = 0.11)よりも有意ではないが数値的には悲しい(t(17.6)= 1.60、p = 0.13)
・音楽の場合、否定的な記述よりも肯定的で中立的な意図記述の方が一致しているが、詩の場合には逆のパターンが現れる
・否定的な意図は中立的な記述に比べて詩の楽しみを増加させるが、音楽の楽しみは中立的な条件に比べて減少
・曖昧な音楽は、否定的な意図の記述と対になった場合(M = 3.88、SE = 0.13)、中立的な意図の記述と対になった場合(M = 4.11、SE = 0.14)と比較して、楽しさが有意に低かった
・否定的な意図の記述と対になったときの曖昧な詩(M = 3.46, SE = 0.141)は、中立的な意図の記述(M = 3.18, SE = 0.150)と対になったときよりも有意に楽しい
→人々は言語に基づく芸術(詩)の体験にも、言語に基づかない芸術(音楽)の体験にも同じように意図の記述を統合することができる
コメント
曖昧さ、詩、そして、領域一般性と特異性について研究している、今一番欲しかった論文。音楽は楽しい方向にプライムすると感動、楽しみが増すが、詩は悲しい方向にプライムすると感動、楽しみが増すというのはシンプルにとても面白い発見と思った。しかも、その理由を音楽は社会的な要素もあって、みんなで楽しむが、詩は1人で楽しみ、人間への洞察を達成するものって考察しているのがとても興味深かった。引用していた論文で、興味深いものがたくさんあったので、どんどん読み進めていきたい!
論文
Margulis, E. H., Levine, W. H., Simchy-Gross, R., & Kroger, C. (2017). Expressive intent, ambiguity, and aesthetic experiences of music and poetry. PloS one, 12(7), e0179145. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0179145