文化の影響: 全体的 vs. 分析的認識 (Nisbett & Miyamoto, Trends in Cognitive Sciences, 2005)
みなさんこんにちは!
微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。
今日も論文を読んでいきます。
文化の影響: 全体的 vs. 分析的認識 (Nisbett & Miyamoto, Trends in Cognitive Sciences, 2005)
ポイント
■論文の3つの目的
・文化が知覚の分類、知覚情報の記憶、知覚的注意に影響を与えるという主張を確立すること
・文化を模倣した、あるいは「プライム」する手掛かりも知覚に影響を与えることを示す証拠を提示すること
・文化の違いが知覚の異なる特徴的なデフォルトパターンを生み出すメカニズムを推測すること
■推論プロセス
・欧米人は出来事を対象や人の内部的な原因に帰着させる傾向
・アジア人は欧米人よりも文脈や状況に因果関係を帰着させる傾向
・欧米人は日常生活の出来事を推論する際に分類やルールを使う傾向
・東アジア人は関係性や類似性を重視する傾向
▶西洋文化圏の人々は、文脈に依存しない分析的な知覚プロセスに従事する傾向があり、それが埋め込まれている文脈から独立して、注目すべき対象(または人物)に焦点を当てる一方、東アジア文化圏の人々は、対象物とその対象物が置かれている文脈との関係に注目することで、文脈に依存した総合的な知覚プロセスに従事する傾向
■文脈への注目
・中国生まれの参加者はアメリカ生まれの参加者に比べて斑点を全体のパターンとして認識する頻度が高いことを明らかにした
・全体的知覚と分析的知覚を測定できるFramed-Line Test (FLT)を開発
・アメリカ人は日本人よりもはるかに多くの頻度で顕著な物体(より大きく、より明るく、より速く動いていると定義される)を参照して発言を開始したのに対し、日本人はアメリカ人のほぼ2倍の頻度で文脈情報(動かない物体や背景にあるように見える物体と定義される)を参照して発言を開始していた
・アメリカ人も日本人も4歳で全体的な知覚を示すが、アメリカ人の子供は5歳頃から文脈を無視して目立ったものに注目するようになり、日本人の子供とは乖離し始めることを示唆
・アメリカ人は背景操作の影響を受けなかったのに対し、日本人は背景が新規の場合にパフォーマンスが低下した
・中国人被験者は、一般的にも、特に背景に対しても、より多くのサッカード
■メカニズム
・社会構造と社会的実践の違いが知覚の違いの根底にある
・多くの役割処方箋を持つ複雑で相互依存的な社会世界で生活している場合、人は関係性と文脈に注意を払う必要
・東ヨーロッパ人は西ヨーロッパ人よりも文脈に依存した注意パターンを示し、南イタリア人や労働者階級のイタリア人は北イタリア人や中流階級のイタリア人よりも文脈に依存した推論スタイルを示していることを発見
■大きな文字を無視して小さな文字を識別するか(すなわち、特徴に着目した分析課題)、大きな文字を識別する課題(すなわち、刺激対象全体に着目した全体課題)
・独立性をプライミングした人は大文字よりも小文字の方が早く識別できたのに対し、相互依存性をプライミングした人は小文字と同じくらい早く大文字を識別した
・Framed-Line Test を用いて、独立性をプライミングされた韓国人は、相互依存性をプライミングされた韓国人よりも絶対的なタスクで優れたパフォーマンスを示した
■日本とアメリカの小・中・大都市にあるホテル、郵便局、学校を無作為に選んで1000枚の写真を撮影
・客観的測定と主観的測定の両方に基づいて、彼らは日本の知覚環境がアメリカの知覚環境よりも複雑で、多くのオブジェクトを含むことを発見
▶知覚環境の文化的な違いが、実際には注意のパターンの違いにつながることを示した
コメント
2005年に出されたなかなかインパクトが強かった論文。全体的 vs. 分析的というのはとてもしっくりくるし、結果も頑健。この言葉を使ってBrainとか遺伝子多型の論文を読んでいきたい!
論文
Nisbett, R.E., & Miyamoto, Y. (2005). The influence of culture: Holistic versus analytic perception. Trends in Cognitive Sciences, 9, 467–473.