TPH遺伝子と創造的洞察力の関連性について(Zhang & Zhang, Psychology of Aesthetics, Creativity, & the Arts, 2020)
みなさんこんにちは。
微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。
今日も論文を読んでいきます。
TPH遺伝子と創造的洞察力の関連性について(Zhang & Zhang, Psychology of Aesthetics, Creativity, & the Arts, 2020)
結論から言うと、TPH1とTPH2をカバーする16の一塩基多型の遺伝子型を調べ、さらに創造的洞察力のパフォーマンスとの関連性を検証した結果、TPH2が創造的洞察力と関連していることが明らかになった
背景
■洞察と遺伝子
・分子遺伝学的手法を用いて洞察力の遺伝的相関関係を明らかにする方法が有望視
・ドーパミン(DA)関連のカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ遺伝子(COMT)と創造的な洞察力のパフォーマンスとの関連性を評価することで、洞察力の最初の分子遺伝学的研究を行い、創造的な洞察力のパフォーマンスに対するCOMTの効果を示す予備的な証拠を示した(Jiang, Shang, and Su, 2015)
・(DRD2)と創造的洞察力パフォーマンスとの関連性を探り、DRD2が創造的洞察力パフォーマンスに関与している可能性を示唆する結果(ZhangとZhang, 2016)
■セロトニン
・脳内で記憶、学習、気分、睡眠などを制御する神経伝達物質
・セロトニン関連遺伝子は、認知能力や精神疾患などの研究が盛んに行われている
・トリプトファン水酸化酵素(TPH)は、セロトニン生合成の律速酵素であり、TPH1遺伝子(TPH1)とTPH2遺伝子(TPH2)にそれぞれコードされる2つのアイソフォーム(TPH1とTPH2)が存在
・洞察に関する行動学的研究の知見によると、肯定的な気分が大きくなったり、不安が軽減されたりすることで、洞察が恩恵を受けることが示されている
◀TPH1とTPH2は、気分調節や気分障害に繰り返し関与しているとされている
・TPH1とTPH2が発散的思考に関与していることが報告
方法
■参加者:健康な中国の大学生425名(男性99名、女性326名、平均年齢18.92歳、SD = 0.84)
■手続き
・遺伝子採取
・Weisberg (1995)が提案した分類法に基づいて「純粋な」洞察問題と判断される10個の古典的な洞察問題を用いた
結果
・洞察問題の平均正解率は27.5%(SD = 0.19)
・遺伝子ベースの解析では、TPH2のみが創造的洞察力のパフォーマンスと関連しており、TPH1と創造的洞察力のパフォーマンスとの関連は検出されなかった
コメント
いろいろな限界や制約はあるもののTPH2の創造的洞察への関与が認められたインパクトのある(というよりもいち早く手を付けておいしい)研究かなと思った。
論文
Zhang, Jinghuan & Zhang, Shun. (2020). The Association of TPH Genes With Creative Insight Performance. Psychology of Aesthetics, Creativity, & the Arts, 14, 87-93. https://doi.org/10.1037/aca0000202