1 cup of coffee

お引越し https://hitsuwari-jimpei.com/

共感操作が音楽による感情に影響を与える:オペラを題材にした生理心理学的研究(Miu & Baltes, PLoS ONE, 2012)

f:id:jin428:20210622131433j:plain

みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

www.jinpe.biz

 

共感操作が音楽による感情に影響を与える:オペラを題材にした生理心理学的研究(Miu & Baltes, PLoS ONE, 2012)

結論から言うと、共感度が高い状態で悲しい内容のアリアを聴くと、共感度が低い状態に比べて、ノスタルジアの感情が促進され、SCLが低下した

 

背景

■共感には,他人の感情表現を模倣する自動的な傾向(すなわち,感情の伝染) に加えて,その人が考えていることや感じていることを想像しようとする意図的な試みが含まれる 

・このような役割分担能力は,認知的共感として知られている

・認知的共感に関わる神経機構は、感情処理に関わる神経機構とほぼ重なっている

・認知的共感は,自己の視点と他者の視点を適応的に区別するために必要な,実行機能に関連する脳領域をも動員する

・他人の感情体験に認知的に関わると,個人的な感情イメージと同等の自律神経活動パターンが誘発

■音楽を聴く人は音楽の中の感情を知覚するだけでなく,本物の感情を経験し,それは一致した生理的,行動的,主観的な変化と関連しているという考えに独自に貢献

・認知的共感が、音楽が感情を誘発する中枢ルート(中枢神経系が関与するルート)の一つである可能性を説明

・音楽演奏の影響は,対象者の感情表現力と観察者の共感性の両方に依存する共感性の正確さに関係している可能性

・GarridoとSchubert は,「音楽共感」(一般的な特性ではなく,音楽を処理するための認知的スタイル)の尺度を用いて,それがネガティブな音楽の楽しみ方の分散のかなりの部分を説明することを見出した

 

方法

■参加者:N = 56人(女性47人、平均年齢=22.4歳)

■材料:,Antonio Vivaldiのオペラ「Il Farnace」のアリア「Gelido in ogni vena」と,Maria Malibranのオペラ曲「Rataplan」の2種類を使用

■手続き

・実験前(すなわち,過去数週間から現在まで)の気分を測定するために,PANAS(Positive and Negative Affect Schedule)

・トロント共感質問票(TEQ)は,他者の感情状態を正確に感情的に洞察することと定義される特性共感を測定するもの

・Geneva Emotional Music Scales(GEMS)は,音楽によって誘発される次のような感情を定量化するために使用された:驚き,超越,優しさ,懐かしさ,安らぎ,力強さ,喜びの活性化,緊張,悲しみ

・心電図(ECG),皮膚コンダクタンス,および呼吸は,Biopac MP150システムと特定の電極およびトランスデューサを用いて,実験中に連続的に記録

・共感度が低いか高いかの指示を受けた:共感度が高い条件では、演奏者が音楽で表現されていることに対してどのように感じているかをできるだけ鮮明に想像し、その感情を自分自身で感じようとするように指示され、共感度が低い条件では、音楽で表現されていることに対して客観的な視点を持ち、演奏者がどのように感じているかにとらわれないようにするように指示された

・音楽を聴いた直後にGEMSを記入し、音楽を聴いているときに感じた感情を評価

 

結果

■気質的共感

・共感性の個人差は、Gelidoを聴いた後に報告された悲しみ(R2 = 0.131, β = 0.363, p = 0.01)、驚き(R2 = 0.092, β = 0.303, p = 0.041)、超越感(R2 = 0.08, β = 0.282, p = 0.05)を有意に予測

■共感度の低い条件と比較して、共感度の高い条件では、Gelidoを聴いた後に報告されたノスタルジアのレベル(F[3, 54] = 8.87, p = 0.004, Cohen's d = 0.87)が増加し、Rataplanを聴いた後に報告されたパワーのレベル(F[3, 54] = 8.15, p = 0.005, Cohen's d = 0.84)が増加した

■生理指標

・低共感条件と比較して、高共感操作では、Gelidoの時にSCLが減少し(F[3, 54] = 12.06, p = 0.006, Cohen's d = 0.84)、Rataplanの時にRRが増加した(F[3, 54] = 10.19, p = 0.000, Cohen's d = 1.03)

■考察

・音楽による悲しみはSCLの低下と関連し、幸福感はRRの上昇と相関することが示された

・特性共感がネガティブな感情と特異的に関連しているという推測を支持している▶安直な考察になりがち

・実験室で誘発されるネガティブな感情(例えば、悲しみ)は、ポジティブな感情よりも単純に顕著である可能性がある

 

コメント

実験操作として、共感度高低の支持を出しているのがおもしろい。ここで使われている教示は参考になるかもしれない。

 

論文

Miu, A. C., & Balteş, F. R. (2012). Empathy manipulation impacts music-induced emotions: A psychophysiological study on opera. PLoS ONE, 7(1). https://doi.org/10.1371/journal.pone.0030618