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ノスタルジアは死の脅威の検出を高める:神経および行動学的証拠(Yang et al., Scientifc Reports, 2021)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

  

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ノスタルジアは死の脅威の検出を高める:神経および行動学的証拠(Yang et al., Scientifc Reports, 2021)

神経レベルでは、ノスタルジックな参加者(対照群と比較して)は、死に関連する言葉(中立群と比較して)に反応して、右扁桃体がより強く活性化されるという仮説を立て、それを発見した

 

背景

■ノスタルジアは、「過去に対する感傷的な憧れや切ない愛情」(The New Oxford Dictionary of English, 1998, p. 1266)と定義

・自己に関連したほろ苦い、ポジティブな社会的感情

・ノスタルジアは、年齢を問わずに存在し7,8,9、文化を問わずに存在する普遍的なもの

■ノスタルジアと実存的な脅威の関連性

・脅威のシグナル、特に死に関連するシグナルの検出は、生物の生存に不可欠

・ノスタルジアは接近動機を活性化:ノスタルジアは行動活性化システムを作動させ、さらに行動抑制システムを混乱させる

・ノスタルジアは、覚醒感やエネルギーを高め、若々しさを感じさせ、開放性や創造性を育み、インスピレーションや楽観性を高め、リスクを取ったり、重要な目標を追求したりすることを促す

・ノスタルジアが警戒心や開放感などのアプローチ志向を促進するのであれば、その感情は脅威の検出を促進するはずだと考えた

■Brain

・脅威の検出に重要な役割を果たす扁桃体の活動に注目

・死への不安が高まった状態である「死の強調」を実験的に誘発すると、対照条件に比べて右扁桃体の活動が活発になることが示されている29

 

方法

■参加者:北京にある12の大学(北京林業大学、北京師範大学、中国科学院大学など)の学部生40名(女性22名、男性18名、年齢幅=18~26歳、M=22.24、SD=2.11)

・参加者をノスタルジア条件(n=20)とコントロール条件(n=20)に無作為に割り当て

・実験の前日に、Southampton Nostalgia Scale3(α=0.74)を用いて形質的なノスタルジアを測定し、Rosenberg Self-Esteem Scale42(α=0.90)を用いて形質的な自尊心を測定

・これらの2つの特性は、死の脅威のプロセスに関連することが示唆されているが、これらの2つの特性については、どの尺度においても、ノスタルジア条件と対照条件の間に差はなかった

■手続き

・fMRIのスキャン中、被験者はノスタルジア操作と単語関係タスクを行った

・懐かしい写真26枚、対照写真26枚、ベースライン写真26枚を用意

・懐かしい写真には子供の頃の情景や物が描かれ、対照的な写真にはそれに相当する現代生活の情景や物が描かれ、ベースライン画像は、懐かしさを感じさせないニュートラルな画像

・ノスタルジア条件の参加者は,26枚のノスタルジックな写真を見たが,それぞれの写真には1枚の同じベースライン写真が(前後に)添えられていた

・写真はそれぞれ8秒間提示され,刺激間の間隔は8秒であった

・セッションの最後に,参加者は3項目の操作チェック4,6を行いました:「今,懐かしいと感じる」,「今,懐かしい気持ちになっている」,「今,かなり懐かしい気持ちになっている」(1=強くそう思わない,4=強くそう思う,α=0.95)

・死亡率の顕著性の操作:「言葉の関係性課題」を応用

・16語(中国語)の単語を、8語ずつ、死に関連するものと、中立的なものに分類

・2つの単語のペアが連続して提示され(合計88試行),参加者はペアになった2つの単語が同じ意味カテゴリに属するか,異なる意味カテゴリに属するか判断

・(1)8つの死に関連する単語のプールのすべての組み合わせから選ばれた28組の死に関連する単語のペア,(2)8つの中立的な単語のプールのすべての組み合わせから選ばれた28組の中立的な単語のペア,(3)同一のペアを避けて同じ単語のプールからランダムに選ばれた1つの死に関連する単語と1つの中立的な単語の32組のペア

・ノスタルジアの神経基盤の研究はまだ始まったばかりであることを考慮し,より厳しい閾値(p<0.005,多重比較の補正なし)で全脳解析を行った

 

結果

■ノスタルジア条件の参加者(M = 2.83, SD = 0.84)は、対照条件の参加者(M = 2.13, SD = 0.68)よりもノスタルジアを感じると報告しました(t(38) = 2.90, p = 0.006, 95%信頼区間(CI)[0.21, 1.19], d = 0.92)

■全被験者を対象としたROI解析の結果、死に関連する刺激(対中性刺激)に対する反応は、右扁桃体でt(39)=3.18, p = 0.003, 95% CI [0.01, 0.07], d = 0.51となり、左扁桃体でもt(39)=4.51, p < 0.001, 95% CI [0.04, 0.10], d = 0.71となった

・対照条件の参加者と比較して、ノスタルジア条件の参加者は、死に関連した(中立的な)刺激に反応して、右扁桃体ではt(38) = 3.41, p = 0.002, 95% CI [0.03, ,12], d = 1.10の活動が増強されたが、左扁桃体ではt(38) = -0.02, p = 0.98, 95% CI [-0.06, 0.06]の活動が増強されなかった

・死に関連する言葉とニュートラルな言葉の対比では、左右の扁桃体と左下前頭回に有意な活性化が観察

■行動

・精度について,2(懐かしさ:ノスタルジア,対照)×2単語(死に関連する,中立)の分散分析(ANOVA)を行った:交互作用は傾向があり,F(1, 38) = 4.06, p = 0.051,η2p = 0.097

・ノスタルジックな参加者は、死に関連する単語(M = 96.07%, SD = 4.62%)に対して、中立的な単語(M = 91.43%, SD = 10.77%)への反応が有意に高かった、F(1, 38) = 5.04, p = 0.031, η2p = 0. 117であったのに対し、対照群の被験者は、死に関連する単語(M = 95.36%, SD = 5.06%)と中立的な単語(M = 96.61%, SD = 5.73%)に対する応答が同等の精度であった(F(1, 38) = 0.37, p = 0.55, η2p = 0.010)

・反応時間について、2(懐かしさ:ノスタルジア、対照)×2単語(死に関するもの、中立)のANOVA:交互作用は有意ではなく、F(1, 38) = 1.59, p = 0.21, η2p = 0.040、また、単語の主効果も有意ではなく、F(1, 38) = 0.82, p = 0.37, η2p = 0.021

・ノスタルジアの主効果は有意であった。ノスタルジックな参加者(M = 1.11秒、SD = 0.38秒)は、対照的な参加者(M = 0.89秒、SD = 0.16秒)よりも遅い反応時間を示しました(F(1, 38) = 5.71, p = 0.022, η2p = 0.131)

 

コメント

ノスタルジアと死の脅威が関連しているのはおもしろいけど、結果がシンプル過ぎる、かつ、行動と脳の結果が一致していないので、発表するには弱いかな、、

 

論文

Yang, Z., Sedikides, C., Izuma, K. et al. Nostalgia enhances detection of death threat: neural and behavioral evidence. Sci Rep 11, 12662 (2021). https://doi.org/10.1038/s41598-021-91322-z