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認知的欲求と現実的絵画および非現実的絵画の鑑賞・理解・視聴時間との関係について(Ostrofsky & Shobe, Empirical Studies of the Arts, 2015)

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みなさんこんにちは!

じんぺーです、今日も論文を読んでいきます。

 

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認知的欲求と現実的絵画および非現実的絵画の鑑賞・理解・視聴時間との関係について(Ostrofsky & Shobe, Empirical Studies of the Arts, 2015)

結論から言うと、低NFC参加者は高NFC参加者よりも非現実的な絵画を理解し、好きで、高NFC参加者は、低NFC参加者に比べて、両タイプの絵画の鑑賞時間が短かった。

 

背景

■芸術作品への評価に関係する一般的な要因として、評価者のパーソナリティ

・本稿では、Need for Cognitive Closure (NFC) 特性に注目

■NFC

・高いNFCは、明確な意味を持たない曖昧な状況への嫌悪として部分的に定義されているため、この性格特性は、芸術家が描こうとするものの曖昧さの点で異なる芸術作品に対する美的嗜好と関連するだろうと予測できる

・曖昧さの違いとして、具象画と抽象画の違い

・Wiersema, van der Schalk, and van Kleef (2012, Study 2)がこの予測を検証し、確認

・先行研究では、以下の違いが明確ではなかった

・(a)絵画の意味の曖昧さに関わらず、認識可能な物体が描かれていない絵画を嫌う、または(b)認識可能な物体/シーンの有無に関わらず、意図された芸術的意味の点で曖昧な絵画を嫌う

■本研究

・NFCと2種類の絵画(写実的な絵画と非写実的な絵画)に対する嗜好との関係を評価することを目的

・例えば、ブロンヅィーノの「青年の肖像」は写実的な絵画であり、シャガールの「詩人」は非写実的な絵画:どちらの作品も一人の男性が描かれている

 

方法

■参加者:学部生58名

■刺激:現実的な絵画12枚と非現実的な絵画12枚

・非写実的な絵画は少なくとも1人の人間が描かれているという基準で選ばれた

■手続き

・参加者全員に、それぞれの絵を好きかどうかを判断するのに必要な時間だけ見るように指示

・気に入ったと判断したら、すぐにキーボードの1~9を押すように指示されました(1:全く気に入らない、9:非常に気に入った)

・評価用紙の質問:(a)画家が絵で伝えようとした意味を、参加者がどの程度理解したと思うか、(b)過去にその絵を見たことがあるとどの程度確信しているか、をリッカート式で評価

・すべての絵画の評価が終わった後、参加者はNFCSを完了

 

結果

■現実的な絵画(M ¼ 6.15, SD ¼ 1.19)の方が、非現実的な絵画(M ¼ 3.63, SD ¼ 1.31)よりも有意にアーティストの意図する意味を理解していると答えた

・絵画を鑑賞する時間が長いほど、絵画に対する理解が深まる傾向

■参加者は現実的な絵画(M ¼ 5.82, SD ¼ 1.09)が非現実的な絵画(M ¼ 4.61, SD ¼ 1.48)よりも有意に好き

・加者の好感度は、現実的な絵画、非現実的な絵画ともに、意図された意味を理解していると感じる度合いと正の相関があり、r(56) ¼ 0.45, p < 0.001、r(56) ¼ 0.40, p < 0.01となり、意図された意味を理解していると感じるほど、絵画を好きになる傾向

・現実的な絵画(M ¼ 19.40秒、SD ¼ 10.73)を非現実的な絵画(M ¼ 21.57秒、SD ¼ 12.04)よりも有意に短い時間で鑑賞した後、好感度の評価を行った(t(57) ¼ 2.78、p < 0.01、Cohen's d ¼ 0.38)

■NFC

・非写実的な絵画に対する画家の意図した意味を理解したと報告した程度とは負の相関があった(r(56) ¼ .41, p < .01)

・参加者のNFCの程度は、現実的な絵画に対する好感度とは有意な相関を示さなかったが、非現実的な絵画に対する好感度とは負の相関を示した(r(56) ¼ 0.43, p < 0.001)

・参加者のNFCの程度は、現実的な絵画をどれだけ好きかを決めるのにかかった時間と負の相関があり、r(56) ¼ .27, p < 0.05、非現実的な絵画は、r(56) ¼ .29, p < 0.05

▶NFCが高い人は、どちらの種類の絵画が好きかを早く決める傾向がある

 

コメント

先行研究との違いは小さいかもしれないけど、確かに一歩進んでいるいい研究。具象 vs. 抽象という分け方ではなく、(どちらも人物を残しつつ)意味の曖昧さだけで分けたのは上手い!

 

論文

Ostrofsky, J., & Shobe, E. (2015). The Relationship Between Need for Cognitive Closure and the Appreciation, Understanding, and Viewing Times of Realistic and Nonrealistic Figurative Paintings. Empirical Studies of the Arts, 33(1), 106–113. https://doi.org/10.1177/0276237415570016