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芸術作品の曖昧さ:芸術作品を刺激とした実験美学研究の指針 (Hayn-Leichsenring, Flontiers in Psychology, 2017)

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みなさんこんにちは。

教育と心理学について考えているじんぺーです。

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前回の論文はこちら▽

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早速行きます!今日はレビュー論文!どうまとめたらいいか試行錯誤していきます。

 

芸術作品の曖昧さ:芸術作品を刺激とした実験美学研究の指針 (Hayn-Leichsenring, Flontiers in Psychology, 2017)

背景

これまでの実験美学のモデルは、刺激としての芸術作品に焦点を当てたものではなく、美的体験の特定の側面に焦点を当てたものであり(つまり、刺激に対する知覚と処理に関するもの)、焦点は実験の参加者(観察者または芸術家)にあって、それぞれの研究者によって行われた実験的決定(例えば、使用される刺激、実施された実験の目的)は大きく無視されている。

→しかし、これらの決定は、結果の解釈可能性にとって非常に重要である。

目的

1.美学分野の科学研究においては、作品の存在論的な状態、作品という言葉の適用意図、調査される処理のモードを意識することが大きな利益となることを論じる

2.実験のための刺激の選択を容易にし、被験者の獲得に関して意思決定を行い、いくつかの一般的な研究問題を回避するための決定木を提案する

Artworkに関する様々な視点

本質主義:芸術作品は物理的なものであるという信念のもとに、私たちの世界の中に物質的な媒体を持っていなければならない

意図主義:芸術作品を純粋に物理的なものとして捉える本質主義とは対照的に、精神的な側面も考慮した、つまり芸術作品を混合されたアイテムとして捉える(芸術作品は感情や非言語的な情報を伝達する人工的なもの)

機能主義:芸術作品を特定の目的を果たさなければならない社会的構成物ととらえる

歴史主義:すでに芸術作品として認識されている以前のアイテムとの関係において、偶発的な物語の中にアイテムを埋め込むことが可能であれば、我々はアイテムを芸術作品として認識する

制度主義:芸術作品として指名されたアイテムのことを芸術作品ととらえる

クラスター・アカウント:上に提示されたすべての意図を組み合わせたもの

2つの処理モード

自動処理と制御された処理の2つの処理モードが階層的 (A) または同時 (B) の2つのモデル

(A) The Pleasure-Interest Model of Aesthetic Liking (PIA Model) (Graf and Landwehr, 2015)

(B) The Model of Aesthetic Experience (AE Model) (Redies, 2015)

刺激の取り扱いに関する4つの問題

知覚モード問題:ある物体が芸術作品として知覚される場合、それは特定の固有の精神的要素を持っているため、芸術作品と非芸術作品では知覚モードが異なる(私たちは対象物を芸術作品として分類すると、対象物を違った目で見ることになる)

混在物問題:研究者はしばしば芸術作品を物理的なアイテムとして扱い、その精神的な要素を無視している

2つの緊張問題:同じ項目/刺激に対して2つの異なる意図を適用すると、誤った結論を導く可能性がある

計算不能なクラスター・アカウント問題:研究者はおそらくほとんどの場合、その選択過程を意識していない

実験美学のためのガイドライン

刺激としての美術品を用いた研究では、以下の 3 つの決定をしなければならない。

(1)芸術作品の存在論的な状態(physical, mental, mixed)

(2)刺激の目的に対する芸術作品という言葉の適用意図 (essentialism, ... cluster acount)

(3)調査された処理モード (autonomic or controlled)

まとめ

実験美学の分野では、多くの研究がアートワークという言葉をめぐって苦闘している。ここでは、明確な定義の欠如が、主にアートワークの存在論的な状態や、実験刺激の選択と使用の不一致に起因する問題を引き起こす可能性があることを論じた。その指針として、決定木を作成した。この決定木の意味するところに従えば、将来的にはより一貫性のある比較可能な結果が得られるかもしれない。

コメント

いままでもやもやしていたところが少し晴れた気がする。芸術作品なのにそんな使い方(ただの1つの視覚刺激として提示するような感じ)していいの?とおもうところもあったから。

詩歌だと、どのように芸術の精神的特徴が乗ってくるのかよくわからないけど、芸術を考えるうえで、さまざまな視点(6つの主義)や2つの処理モード(2015年の2つの論文は読まないとな…)について知れたのはよかった。あまり流行っていない決定木だけど、議論は有意義だったように思う。(図がとても分かりやすいものばかりだったけど、著作権的に載せれないんだよなあ残念)

 

論文

Hayn-Leichsenring, G. U. (2017). The ambiguity of artworks –a guideline for empirical aesthetics research with artworks as stimuli. Frontiers in Psychology, 8, 1857. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.01857.