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メンタルイメージ力と感情の特殊な関係? (Holmes & Mathews, Emotion, 2005)

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みなさんこんにちは。

教育と心理学について考えているじんぺーです。

今日も論文読んでいきます!

前回のものはこちら▽

 

www.jinpe.biz

 

今日の論文は以前にも読んだことがあるのですが、再読する必要があったのでせっかくなのでまとめていきます!

 

メンタルイメージ力と感情の特殊な関係? (Holmes & Mathews, Emotion, 2005)

結論から言うと、回避的な出来事を想像する指示は、同じ記述の言語的な意味に焦点を当てる指示をしたよりも、報告された不安のより大きな増加に繋がり、イメージ指示の方がより強い情動的効果を引き出すが明らかになった。

 

背景

・精神的イメージと感情の間の特別な関係についての仮定は、多くの裏付けとなる証拠がないにもかかわらず、実験心理学と臨床心理学の両方で共通

c.f. 『イメージと脳』(Kosslyn, 1994) で「メンタルイメージの研究の次のステップは、感情に取り組むことである」

・先行研究のほとんどは、イメージと代替的な(例えば、言語的な)表現形態との間の明確な比較を行っていない

例外)一連の言葉をイメージするか、口頭で連想させるように求めると、イメージ条件の被験者は、言語連想条件の被験者よりも皮膚コンダクタンス反応が大きかったが、不安の自己報告は評価されなかった(Reyher and Smeltzer, 1968)

 

目的

参加者が同じ記述を読んだ場合よりも、参加者が嫌な場面を聞いて想像した場合の方が、イメージではなく言葉の意味に焦点を当てた場合よりも、自己報告された不安な気分が高まるという仮説を検証する。

 

実験1

参加者:24名(女性15名、男性9名、M=46.2歳、SD=15.9)

刺激:否定的感情を伴う状況の記述を100件(同じ女性が朗読、それぞれ10~13秒)

→半分は身体的な損傷や損傷の可能性を含む事象の結果を記述、もう半分は心理社会的に不利な結果を記述

手続き:イメージ条件(音声を聞きながら具体的な状況を想像)と言語意味条件(与えられた音声の意味を考える)

→記述の後にYes/Noの質問が提示され、その質問もイメージが必要なものか、そうでないものかに分かれている

結果

1.イメージ条件における不安スコアは、有意な増加を示したが(t(11)=3.83, p=.003, d=0.91) 、言語的・意味的条件では、有意ではない傾向しか示さなかった (t(11)=1.86, p=.091, d=0.43)

2.イメージ条件では、情緒性スコアは時間の経過とともに有意に増加した (t(11)=3.24, p=.008, d=0.67, 平均増加率 0.57) が言語的意味的条件では、有意な増加は見られなかった (t(11)=0.14, p=.89, d=0.02, 平均増加率0.02)

3.イメージと言語処理で期待される情緒的効果の実験後の評価では有意差が認められなかった

 

実験2

参加者:51名(女性38名、男性13名、M=45.5歳、SD=13.5)

→43人の参加者(女性31人、男性12人、M=46.0歳、SD= 14.0)

刺激:実験1で使用した100個の否定的記述に加え、100個の肯定的記述

結果

1.不安は時間の経過とともに増加したが、条件(イメージ vs. 言語:F(1, 39)=0.30、p. = 59)またはvalence(nega vs. posi:F(1, 39)=0.01、p.=91) の主効果はなかった

2.ポジティブイメージ条件とポジティブ言語条件の間で状態不安の変化に有意差はない (t(18)=1.22, p=.24, d=.52)

 

コメント

とても丁寧に実験パラダイムを設定している様子が伝わってきた。特に実験1での課題を実験2で丁寧に排除している(例えば、文を聞かせた後の質問の仕方や気分の評価に時間を置くこと)。

自分も俳句が喚起するイメージと感情の関係を説得したくてこの論文を読んだが、俳句のような鑑賞だと、意味を理解するプロセス(この実験でいう言語意味条件)かその俳句で詠まれている情景を想像するプロセス(この実験でいうイメージ条件)のどちらかが起こっているかわからないのでこの実験と同じような立ち位置は難しいのだと思った。ただ、イメージ条件で不安が上昇したというのは間違いのないことで、この関係についてはHolmesさんらのグループの研究をもって読む必要があると思う。

 

論文

Holmes, E. A., & Mathews, A. (2005). Mental Imagery and Emotion: A Special Relationship? Emotion, 5(4), 489–497. https://doi.org/10.1037/1528-3542.5.4.489