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過去からの爆発:ノスタルジアの恐怖管理機能(Routledge et al., Journal of Experimental Social Psychology, 2008)

 みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

 

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過去からの爆発:ノスタルジアの恐怖管理機能(Routledge et al., Journal of Experimental Social Psychology, 2008)

結論から言うと、死が顕著な場合、ノスタルジア傾向が強いほど、人生を意味のあるものと感じ、死を意識すると、ノスタルジアに傾くほど、死を意識することが少なくなった

 

背景

■時間を基準に考える能力は、他の認知能力と相まって、人間に死という逃れられない現実を認識させる

・人のはかなさを明らかにする能力と同じ能力が、人の超越を促進することもある

・恐怖管理理論(TMT: Greenberg, Pyszczynski, & Solomon, 1986)から派生した研究では、死の意識に直面して意味感を強化しようとする努力を反映した幅広い行動に焦点

■ノスタルジア

・ノスタルジアの経験が恐怖対策として特に有効な手段であることを示唆

・実存的な脅威に直面したときに、ノスタルジックな回想が意味のある人生経験の貯蔵庫を提供する

・ノスタルジックな回想は、多くの場合、重要な人生のイベントを中心に展開される

▶本研究では、ノスタルジアが死に関する脅威的な認知からの保護をどの程度提供しているかを検討

■TMTとノスタルジア

・4つの特定の心理的機能を果たす過去に関する自己関連性のある感情的反省

1.スタルジアはポジティブな感情の貯蔵庫として機能

(ノスタルジアはほろ苦いこともありますが、基本的にはポジティブな感情体験)

2.ノスタルジアは自己肯定感を高める

3.ノスタルジアは社会的なつながりを強化

4.ノスタルジアは人生の意味を認識させ、実存的な問題への対処を容易にする(実証研究はまだなし)

 

実験1

過去を肯定的に考える傾向(ノスタルジア傾向の代用)を測定した後、MSを誘発し、人生の意味の認知を評価した

■参加者:76名(女性54名、男性22名)

■手続き

・Time Perspective Inventory(TPI;Zimbardo & Boyd, 1999):過去・現在・未来に対する態度を測定する56項目

・参加者は無作為にMSまたは歯痛操作

・注意力操作の後、パズルによる気晴らし課題

・従属指標となる「意味のない尺度」(Kunzendorf & Maguire, 1995)を記入:人生にどの程度の意味があると認識されているかを評価するもの

■結果

・回帰分析を行い、第1段階では、主効果として、説得力操作(ダミーコード)と過去の知覚変数(中心化)を入力し、第2段階では、交互作用項:第1段階では主効果は見られなかったが、第2段階の二元的な交互作用は,b = -.41, SE = 0.20, t = -2.05, p = 0.045と,有意

・MS条件では、過去を肯定的にとらえるほど、人生が無意味だと感じなくなる

▶ノスタルジアは意味を提供する資源であることが示唆

 

実験2

ノスタルジアがMS効果を緩衝する可能性をさらに探った

■参加者:40名の参加者(女性31名、男性7名、身元不明2名)

■手続き

・Southampton Nostalgia Scale (SNS)を5項目:SNSと実験1で用いたTPIの8項目との間に有意な相関が認められ、r = .36 p < .05となった。同じ研究で、SNSは、Batcho Nostalgia Inventory(Batcho, 1995)と相関した(r = 0.40 p < 0.01)

・MS or 歯痛

・実際には死の思考へのアクセス性を測定するための「単語完成課題」が参加者に提示された:8個の単語の断片が被験者に提示され、そのうちの6個は、中立または死に関連する単語で完成させることができた。例えば、COFF_ _という単語の断片は、COFFEE(中立的な単語)またはCOFFIN(死に関連する単語)として完成

・自尊心と心理的幸福度

■結果

・回帰分析:第一段階では、ノスタルジア傾向の主効果が有意に現れ、b = -.34, SE = .14, t = -2.21, p = .03、第2段階では、b = 0.64, SE = 0.27, t = -2.37, p = 0.02と、有意な交互作用によって修飾

・MS条件では、予測通り、ノスタルジア傾向の増加は死の思考へのアクセス性の減少と関連

・自尊心とSWLは有意に相関していたが(r = 0.41, p = 0.02)、自尊心とノスタルジア傾向(r = -.05, p = 0.80)、SWLとノスタルジア傾向(r = -.18, p = 0.33)の相関は有意に近づかなかった

・自尊心(すべてのps>0.25)やSWL(すべてのps>0.55)が関与する主効果や相互効果は現れなかったが、れまでに報告されている有意な交互作用と単純な傾きの検定は、引き続き有意であった(すべてps<0.05)

 

実験3

ノスタルジアを実験的に操作してMSの効果を調べる

■参加者:75名の参加者(女性48名、男性26名、身元不明1名)

■手続き

・ノスタルジア課題または普通の出来事を書く課題のいずれかを与えられた:「あなたが最も懐かしさを感じる過去の出来事を思い浮かべてください」▶その出来事に関連する4つのキーワード(その出来事の要点をまとめた言葉)を書き出してください

・MS(実験1-2と同様)またはコントロールの操作

■結果

・MS/非ノスタルジア条件の参加者(M = 2.11, SD = 0.81)は、他のすべての条件の参加者(M = 1.48, SD = 0.89)に比べて、より大きな死の思考へのアクセス性を示し、F(1,73) = 7.21, p < 0.01

・MS/ノスタルジア条件(M = 1.56, SD = 0.78)は、2つの非MS条件(M = 1.45, SD = 0.95)と有意な差はなく、F(1,54) = 0.18, p > 0.65

・非ノスタルジア条件では、MS参加者(M = 2.11, SD = 0.81)は、対照参加者(M = 1.47, SD = 1.00)よりも高い死の思考へのアクセス性を示し、F(1, 34) = 4.39, p < 0.05

 

コメント

1つ1つの実験はとてもシンプルだが、仮説の建て方、理論の使い方が上手だとと思った。ノスタルジア傾向性の尺度を作った論文として引用されているところも多いと思うが、その尺度作成過程はシンプルすぎる。これがたくさん使われているのが少し驚き。 

 

論文

Routledge, C., Arndt, J., Sedikides, C., & Wildschut, T. (2008). A blast from the past: The terror management function of nostalgia. Journal of Experimental Social Psychology, 44, 132–140. 

https://doi.org/10.1016/j.jesp.2006.11.001