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注意制御の神経基質に対する文化的影響(Hedden et al., Psychological Science, 2008)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

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注意制御の神経基質に対する文化的影響(Hedden et al., Psychological Science, 2008)

結論から言うと、注意制御に関連することが知られている前頭葉および頭頂葉の脳領域の活性化は、文化的に好ましくない判断をしているときの方が、文化的に好ましい判断をしているときよりも大きかった。

 

背景

■社会的認知の文化比較

・東アジア文化圏の人々は、相互依存的(相対的、文脈的)な要求を持つ課題の方が、独立的(絶対的、文脈に依存しない)な要求を持つ課題よりもパフォーマンスが高く、西洋文化圏の人々は、独立的な要求を持つ課題の方が、相互依存的な要求を持つ課題よりもパフォーマンスが高い(Kitayama, Duffy, Kawamura, & Larsen, 2003)

・今回の研究では、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、独立(絶対)判断と相互依存(相対)判断を伴う条件下で、文化的な経験が単純な知覚の処理を脳のどこで変化させるか検討

 

方法

■参加者:米国在住の東アジア人10名と西欧系アメリカ人10名の計20名(年齢18~26歳、女性11名、男性9名)

■Kitayama et al. (2003) の課題

・参加者は,箱の中に縦線が入っている一連の刺激を見た.2×2デザインで,相対的指示(文脈を考慮する)または絶対的指示(文脈を無視する)の下で刺激を判断し,判断は一致(容易)または不一致(困難)のいずれか

 

結果

■行動

・参加者は、一致する試行の方が不一致の試行よりも速かった(一致:M = 902 ms, SD = 116; 不一致:M = 947 ms, SD = 133), F(1, 18) = 7.64, p = 0.01

・相対評価と絶対評価の間に有意な差がなかった

■イメージング

・不一致と一致の対比では、両群とも、文化的に好ましくない課題では、同じ課題でもう一方の群に見られた活性化よりも大きな両側の活性化が広く見られた:これらの活性化は、持続的な注意制御をサポートすることが知られている前頭前野と頭頂部に主に集中

・アメリカ人は、相対的指導条件でより大きな活性化差を示し(M = 0.08, SD = 0.05)、絶対的指導条件では(M = −0.06, SD = 0.10), t(9) = 3.56, p = .006)

・東アジア人はその逆で,絶対指示条件での活性化の差(M = 0.12, SD = 0.10) が相対指示条件での活性化の差よりも大きかった(M = -0.03, SD = 0.04)

■文化的アイデンティティに関する質問票の各人の得点と、非嗜好性課題のコントラストで同定された11個のROIの複合領域の活性化との相関

・アメリカ人では、独立性のスコアが高いほど、絶対的指示(文化的に好ましい)条件での活性化の低下と有意に相関し(r = -.65, p = 0.04)、相対的指示(文化的に好ましくない)条件での活性化の増加とは有意ではなかった(r = 0.43, p = 0.21)

・アメリカ文化への帰属意識が高いほど、絶対的課題の処理が容易になることを示唆

 

コメント

今となっては少し当たり前っぽい知見だけど、きれいに結果が出ている。サンプル数少なくてもしっかり主張できて、いい論文載るんだなあと改めて認識。

 

論文

Hedden, T., Ketay, S., Aron, A., Markus, H. R., & Gabrieli, J. D. E. (2008). Cultural Influences on Neural Substrates of Attentional Control. Psychological Science, 19(1), 12–17. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02038.x