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人工知能とアーティスト、そしてアート:人間と人工知能が制作したアート作品への態度(Hong & Curran,M, ACM Transactions on Multimedia Computing, Communications and Applications, 2019)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

 

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人工知能とアーティスト、そしてアート。人間と人工知能が制作したアート作品への態度(Hong & Curran,M, ACM Transactions on Multimedia Computing, Communications and Applications, 2019)

結論から言うと、人間が制作した作品とAIが制作した作品は、芸術的価値が同等であるとは判断されないことがわかった。また、AIが制作した芸術作品であることを知っていても、芸術作品の芸術的価値の評価には基本的には影響しない

 

背景

■チューリング・テスト

・AIの先駆者であるアラン・チューリングが提唱した思考実験で、AIが裁判官にAIか人間かを「だます」ことができるかどうかを問うもの

・制作者のアイデンティティを知ることで、参加者の作品の受け取り方がどのように変化するかを問うもの

■人工知能とアート

・AIが生成した製品は、客観的な基準と主観的な基準の両方を満たす「アート」の概念と関連付けることができると主張

 ・"AIはアートを創造できるか?"という問いは、"AIは良い価値のあるアートを創造できるか?"という問いとは区別されるべき

・アートの分野では,創造的なプロセスにおける非人間の役割がますます重要になってきており,注目されている

・AIによる創作物は、単に人間の仕事を模倣しているだけだと言う人もいるかもしれないが、人間もまた模倣する生き物であるため,人間の創造物も他者の模倣から始まっていることを考えるべきである

・20年前には、すでに絵画の領域でAIの創造性を検討した研究

・人々はCANが生成したアートワークを人間が作成したアートワークと区別することができず、評価者は実際に、CANが生成したアートワークがどれだけ斬新で、審美的に魅力的で、意図的で、視覚的に構造化されていて、コミュニケーション可能で、刺激的であるかに基づいて、より高い評価を与えた

・Chamberlainらの研究では、人々は人間が制作したアートワークとコンピュータが制作したアートワークを識別できないものの,コンピュータが制作したアートワークに対してバイアスを持っていた

▶複数の基準でアート作品を評価するよう被験者に求めた本研究とは異なり、単に与えられたアート作品の魅力度を回答者に尋ねただけ

・この研究では、AIと人間のどちらが作品を制作したかという参加者の推定に基づいて評価を行っており、制作者のアイデンティティ(AIか人間か)を参加者に明示的に伝えたわけではない

■人工知能やAIの創造性に対する固定観念を含むスキーマ

・アートはメッセージを伝える媒体であるため、スキーマ理論はアートワークに焦点を当てた研究にも適用可能

・たとえパフォーマンスが客観的に見分けがつかなくても、人工知能が本当に「人間のような」パフォーマンスをすることができるかどうかを疑う人々がいると指摘

・AIアートワークに関する先行研究では,人工知能が制作したアートに対して否定的なバイアスがかかっていることが示されている

■Computers Are Social Actors (CASA)

・人々はコンピュータと対話する際に、社会的行動を行い、社会的ルールを無意識に適用する傾向がある

・人間と人工知能の相互作用に関する研究に拡大・応用されており、AIと相互作用する際に行動や性格特性がどのように変化するかを理解しようとしている

・意図的なエージェントと非意図的なエージェント,すなわち心と機械とのインタラクトに関連する脳の部分が特定されている

・人間と機械の間で相互作用していると信じると,脳の異なる部分が活性化され[30],情報の感覚的な処理にまで影響を及ぼすことがわかっている

 

仮説

1.AIアーティストが制作したと認識されたアートワーク(帰属AIアイデンティティ)は、人間のアーティストが制作したと認識されたアートワーク(帰属人間アイデンティティ)に比べて、芸術的価値について低い評価を受ける。
2.AIが作成した芸術作品と人間が作成した芸術作品は、その芸術的価値において同等であると判断される。
3.AIが作成したアート作品と人間が作成したアート作品の芸術的価値の不一致は、アーティストの帰属するアイデンティティに影響される。

 

方法

■参加者:288名(M=37.66M=37.66,SD=11.22SD=11.22)

■手続き

・無作為に割り振られた72人の参加者からなる4つのグループを、アーティストの実在のアイデンティティ(AI vs. Human)とアーティストの属性のアイデンティティ(AI vs. Human)に基づいて形成

・「帰属AIグループ」の人たちは、画像を見せられる前に、自分が見ている画像がAIによって作られたものであることを伝えられた

・「人間が作った」グループには、画像を見せる前に、人間のアーティストの帰属を教えなかった

・AI作品は3種類(1種類につき2枚)、人間作品は3種類あり、3種類のAI作品は、それぞれ異なるAIアートジェネレーターを使用

・従属変数は,アートスタジオで実際に使用されているものから選ばれ,オリジナリティ,改善や成長の度合い,構成,個人的なスタイルの開発,実験やリスクテイク,表現,アイデアの成功したコミュニケーション,美的価値に関する基準で構成

 

結果

■アイデンティティの観点から,示された画像の制作者にどの程度似ていると思いますか

・人間のアーティスト(M=3.30M=3.30, SD=1.44SD=1.44)とAIのアーティスト(M=2.78M=2.78, SD=1.57SD=1.57)の間で有意

▶人はAIよりも人間のアーティストに類似性を感じるだろうという仮定

■2×2ANOVA

・F(3,284)=1.25F(3,284)=1.25、p=0.290p=0.290、d=0.132d=0.132で、すべての効果は、0.05の有意水準で統計的に有意ではなかった

・AIアーティスト(M=3.13M=3.13、SD=0.64SD=0.64)と人間のアーティスト(M=3.18M=3.18、SD=0.56SD=0.56)が制作したと推定されるアート作品の評価に有意な差がない

・アーティストの実際のアイデンティティに対する主効果は、F(1,284)=3.435F(1,284)=3.435, p=0.065p=0.065, d=0.235となり、AIアーティスト(M=3.09M=3.09, SD=0.61SD=0.61)と人間のアーティスト(M=3.23M=3.23, SD=0.58SD=0.58)が制作した作品の評価に周辺的な差

・アーティストの帰属するアイデンティティとアーティストの実際のアイデンティティの間の交互作用は、F(1,284)=0.445F(1,284)=0.445、p=0.505p=0.505、d=0.079d=0.079となり、仮説3を棄却

・同等性検定の結果は、t(286)=-1.56t(286)=-1.56, p=0.94p=0.94と有意ではなく、AIが制作したアートワークと人間が制作したアートワークは芸術的価値において同等であるという仮説2は支持されない

■各項目t検定(帰属型アイデンティティ)

・「パーソナル・スタイルの確立」の項目では、「AIが作った」と言われた人(M=3.19M=3.19, SD=0.69)と、「人間が作った」と言われた人(M=3.35M=3.35, SD=0.67)で、有意な差

■各項目t検定(リアル・アイデンティティ)

・AIが制作した作品(M=3.34M=3.34, SD=0.65SD=0.65)と人間が制作した作品(M=3.63M=3.63, SD=0.72SD=0.72)で最も有意な差が出たのは「構成」という変数で、t(286)=-3,57t(286)=-3,57, p<0.000p<0.000, d=0.423

「表現の度合い」という変数も、AIのアーティストが制作した作品(M=3.22M=3.22, SD=0.70SD=0.70)と人間のアーティストが制作した作品(M=3.41M=3.41, SD=0.66SD=0.66)の間で、有意な結果(t(286)=-2,28t(286)=-2,28, p=0.02p=0.02, d=0.279)

・美的価値」は、AIアーティスト(M=3.16M=3.16, SD=0.61)と人間のアーティスト(M=3.34M=3.34, SD=0.63SD=0.63)の間で有意な差があった他の変数であり、t(286)=-2,41t(286)=-2,41, p=0.02p=0.02, d=0.290

■AIが作品を制作することへの認識

(画像がAIのアートジェネレーターによって作られたものであると伝えられた参加者のデータのみを使用)

・AIがアートを作れないと認識している人(M=2.81M=2.81, SD=0.59SD=0.59)と認識していない人(M=3.26M=3.26, SD=0.61SD=0.61)では、t(132)=3.86t(132)=3.86, p<0.000p<0.000, d=0.750d=0.750と、有意な差

(受け取った画像が人間のアーティストによって作られたものであると伝えられた参加者のデータのみ)

・AIが作品を制作していることを否定的に受け止めている人(M=3.10M=3.10, SD=0.60SD=0.60)と受け止めていない人(M=3.23M=3.23, SD=0.54SD=0.54)に有意な差はなく、t(152)=1.33t(152)=1.33, p=0.19, d=0.228

・AIによるアート制作に対するネガティブなイメージが、作品の美的価値に与える影響が少ない

 

コメント

AI or 人間が作ったという帰属ではなく、実際の作者の方が結果に影響を与えるという自分たちの研究と同じ結果になっている。この辺り、上手くレビューしたら、実際にどうなのかいえるのかな。

 

論文

Hong, J. W., & Curran, N. M. (2019). Artificial intelligence, artists, and art: Attitudes toward artwork produced by humans vs. artificial intelligence. ACM Transactions on Multimedia Computing, Communications and Applications, 15(2s). https://doi.org/10.1145/3326337