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異文化間の言葉による欺瞞 (Leal et al., Legal and Criminological Psychology, 2018)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートについて発信していますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

 

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異文化間の言葉による欺瞞 (Leal et al., Legal and Criminological Psychology, 2018)

背景

■ 「ジェスチャーの減少」を欺瞞の手掛かりにしていることが研究で示されている

・欺瞞のサインとしての一人称代名詞の減少は、文化によって緩和されていることがわかった(白人のイギリス人参加者が最も多く一人称代名詞を減らし、北アフリカ人参加者が最も少なく、白人ヨーロッパ人と南アジア人参加者はその中間に位置していた)

・文化を超えて判断が行われた場合、判断の精度が低下する傾向がある

■コミュニケーションスタイルの文化的差異に関する理論的視点のうち、最も引用されているのは、ホール(1976)の高コンテクスト・コミュニケーションと低コンテクスト・コミュニケーションの区別である(Liu, 2016)

・高コンテクスト文化と低コンテクスト文化(Hall, 1976)は、メッセージの交換がどれだけ明示的に行われているか、また情報の交換においてコンテクストがどれだけ意味を持つかによって文化を表現するために使われる用語

・高コンテクスト文化で交換されるメッセージは暗黙の意味を持ち、文脈に大きく依存している。高コンテクスト文化では、多くのことが語られず、文化が説明することになる。

・暗黙的な高文脈コミュニケーションの良い例としては、韓国人が話すときに代名詞(例:'I'、'We')を言わないことや、中国人が話すときに時制(過去、現在、未来)を言わないことがあるが、これは文脈に任せることで明確になる

・Copeland and Griggs (1985)は、様々な国を高コンテクスト文化と低コンテクスト文化に分けて定義する方法の概要を示し、中国やアラブの文化を高コンテクスト文化、イギリスの文化を低コンテクスト文化と評価した

■欺瞞の研究で一貫して見出されているのは、真実を伝える人の方が嘘つきよりも一般的に詳細を伝えるということである

・その理由は、嘘つきは、真実を伝える人が伝える量の詳細を伝える想像力と技術が不足している

・詳細が調査員が確認するための手がかりとなることを恐れて詳細を提供することに消極的である

 

方法

参加者:合計306名(153組)で、そのうち男性86名、女性218名(2名は性別を示さなかった)であった。平均年齢はM=21.31歳(SD=3.79)。イギリス人49組、中国人48組、アラブ人56組。

デザイン:Veracity(真実と嘘)とEthnic Groupsを2つの被験者間要因

 手続き:真実と嘘の場面設定複雑…

・面接前アンケート(研究相手との友情を4つの7段階尺度、準備した議論の質)

・「レストランにいる間に何をしていたのか、できるだけ詳しく教えてください」と「正面のドアに関連して、お二人ともどこに座っていましたか」を含む9つの質問を2人に(どちらが答えるかは明示的ではない)

 ・面接中に説得力のあるように見せようとする意欲の度合い

 

結果

■やる気・準備・親睦

・中国人参加者(M = 5.54、SD = 1.47、95%CI [5.26、5.83])は、イギリス人参加者(M = 6.02、SD = 1.46、95%CI [5.75、6.29])やアラブ人参加者(M = 6.15、SD = 1.12、95%CI [5.90、6.40])に比べてモチベーションが低い

・嘘つき(M=6.09、SD=1.11、95% CI [5.85, 6.28])は真実を伝える人(M=5.77、SD=1.58、95% CI=5.52, 5.96)よりもややモチベーションが高いが、平均点は真実を伝える人と嘘つきの両方がモチベーションが高かったことを示した

・合計174名の参加者が面接の準備をしたと報告し、そのほとんどが嘘つきであった(n = 114)

■詳細度

・イギリス人の参加者は、中国人とアラブ人の参加者よりも多くの詳細を提供したが、2か国に有意差はなかった

▶低文脈の文化では、高文脈の文化よりも明快なコミュニケーションスタイルが用いられており、これがこの効果を説明

・真実を伝える人の方が嘘つきよりも詳細な情報を提供

・各エスニックグループでは、真実を伝える人の方が嘘つきよりも有意に詳細な情報を提供し、効果の大きさ(d)は、イギリス人参加者が最も大きかった

■残りの変数(詳細を共変量)

・民族グループに関する一変量効果は、残りの15個の変数のうち11個について有意な効果を示した(イギリス人参加者は中国人参加者よりも常にチェック可能な情報源を挙げる等)

・ 真実性の要因については、15個の言葉の手がかりのうち4個の合計が有意な効果を示した(真実を伝える人は、嘘つきよりもチェック可能な情報源を多く報告、嘘つきは、真実を伝える人よりも規範性を強調し、肯定的なコメントやジョークをすることが多かった)

 

コメント

異文化間の嘘の研究。あまり嘘の研究を読んだことがないので、実験手続きがややこしくて苦労した。高文脈(中国とか)よりも低文脈(イギリスとか)社会の方が詳細を語ってしまうという分かりやすい結果は引用できそうだ!

 

論文

Leal, S., Vrij, A., Vernham, Z., Dalton, G., Jupe, L., Harvey, A., & Nahari, G. (2018). Cross‐cultural verbal deception. Legal and Criminological Psychology, 23, 192-213. https://doi.org/10.1111/lcrp.12131