ミニマリスト・イン・スタイル:日本における自己,アイデンティティ,そしてウェルビーイング (Kan et al., Self and Identity, 2009)
みなさんこんにちは。
微かに混じり合う教育と心理学とアートと。じんぺーです!
今日も論文を読んでいきます。昨日の論文はこちら▽
ミニマリスト・イン・スタイル:日本における自己,アイデンティティ,そしてウェルビーイング (Kan et al., Self and Identity, 2009)
結論から言うと、ミニマリストの幸福の2つの次元(すなわち、感謝と平和的離脱)は日本と米国の両方で明確であることが示唆された。さらに、既存の幸福度の多くの尺度とは異なり、日本人のミニマリスト幸福度スコアは少なくともアメリカ人と同程度に高かった。
背景
■日本は現在世界第3位の経済大国であるにもかかわらず、その平均生活満足度は50カ国中40位であり、国の豊かさだけから予想されるよりもはるかに低い
・なぜ日本人、特に東アジア人は、現在の豊かさに基づいて期待されている以上に不幸になるのか?
・日本人の見かけ上の不幸は、少なくとも部分的には、現在利用可能な幸福度と幸福度の測定装置に存在する文化的バイアスによるものである可能性を探る
■自己の拡大ではなく、無の中に自己を浸すことに存在し、そこから感謝と静けさや平安などの特定の肯定的な感情が生まれると考えられている
・このような全く異なる形の幸福感や幸福感が、東アジアの文化的文脈で文化的に認められているのであれば、この幸福感や幸福感が適切に評価されれば、東アジア人はより幸福であると言えるかもしれない
・幸福の経験は、一瞬の幸せを垣間見ることができる人生への感謝の気持ちを伴っている
・現実から自分自身を切り離すことに成功したとき、個人は平和、安堵感、静けさのある肯定的な感情を経験する傾向がある
研究1
参加者:日本人学生83名(男性16名、女性67名)
尺度:暫定的なミニマリスト幸福感尺度16項目,Psychological Well-being Scale,人生に対する満足度の5項目,ポジティブ・ネガティブ感情
結果:「感謝」因子7項目,「平和的離脱」因子7項目の尺度を作成
・感謝の気持ちは、ここでテストした尺度の大部分と相関する傾向
・対照的に、平和的離脱は、既存の幸福度の尺度とはほぼ独立していた
・重要なことは、平和的離脱と、自己受容やポジティブな感情などの既存の尺度で評価された幸福度の一般的または比較的グローバルな側面との間の相関関係が正である傾向
研究2
参加者:白人のアメリカ人学生112名(男性59名、女性53名)
結果:
・日本とアメリカで2因子の内容はほぼ同じであったが、興味深い相違点が2つ
・他者や自然に対する恩義感(「私の幸せは自分を取り巻く他者や自然に依存している」)が、日本では感謝の要素にかなり強く負荷をかけているが、米国では負荷をかけていない
・「今のうちに満足していると感じる」は感謝の要素に負荷がかかっていたが、米国では平和的離脱の要素に負荷がかかっていた
・感謝については、アメリカ人と日本人の間に平均値レベルの差は見られなかった一方で、平和的離脱については、日本人の平均値がアメリカ人の平均値よりも有意に高かった
コメント
日本人(東洋人)らしいウェルビーイングに注目してそのミニマリスト性を見出した研究。めちゃくちゃ画期的な研究と思うけど、思ったよりこの尺度が広まっていないような印象は受ける。(もうちょっと西洋中心の心理学研究界でなくなったら、もう少し脚光を浴びるのかな?)感謝と平和的離脱という2つの因子もとても魅力的で、これらを使って、俳句のことも少しわかればいいなあと思っている!
論文
Kan, C., Karasawa, M. & Kitayama, S. (2009). Minimalist in Style: Self, Identity, and Well-being in Japan, Self and Identity, 8(2-3), 300-317. https://doi.org/10.1080/15298860802505244