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日本、トルコ、ドイツの異文化情動神経科学的性格比較(Özkarar-Gradwohl et al., Culture and Brain, 2020)

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みなさんこんにちは!

じんぺーです、今日も論文を読んでいきます。

 

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日本、トルコ、ドイツの異文化情動神経科学的性格比較(Özkarar-Gradwohl et al., Culture and Brain, 2020)

結論から言うと、ANPSでは、日本の女性は「恐怖」が高く、トルコの女性は「怒り」が高いというように、ポジティブな影響については女性グループは非常に似ているが、ネガティブな影響については違いが見られた。同様に、日本の男性はFEARとSADNESSが高く、トルコの男性はANGERが高かった。

背景

■母子相互作用スタイル

・母性の基本的な特性(母乳育児の期間、トイレトレーニングの開始、両親の部屋での添い寝の期間など)は、それぞれの文化で独自に規定

・母乳育児の期間は、個人主義的な文化では通常6〜12ヶ月程度ですが、集団主義的な文化では2年程度に及ぶこともある

・個人主義的な文化では、乳児は半年ほどで独立した部屋で眠るようになりますが、集団主義的な文化では両親との添い寝がより一般的で長期にわたる

・関係性と分離性、そして自己対象の分化の強化・抑制は、文化的な影響によって形成される

・長く共生的な東洋の母親スタイルは分離独立を強化せず、それによって自己対象の境界が緩くなるのに対し、西洋の母親スタイルは分離独立を強化して、よりはっきりとした独立した自己を促進する(Roland 1996)

■家族モデル

・ドイツは独立家族モデルが最も多く、インドは相互依存家族モデルが最も多く、トルコは感情的相互依存家族モデル(前2者の統合モデル)が最も多いことがわかった(Mayer et al. 2012)

・感情的相互依存家族では、個人の自律性が認められる一方で、感情的な親密さと相互関係が維持される

・相互依存を維持しながら自立することは可能であり、それはこれらが対立する両極ではなく、共存するニーズであるからである(Kagitçibasi 2005, 2007)

■神経科学的研究

・中国人は自己判断と母親判断の両方でMPFCの活性化が大幅に増加するのに対し、欧米人は母親参照条件ではそのような活性化の増加が見られないことが明らかになった

・個人主義的な価値観を支持する被験者は,一般的な自己記述に対して内側前頭葉皮質(MPFC)の活性化が高いのに対し,集団主義的な価値観を支持する被験者は,社会的文脈に沿った自己記述に対してMPFCの活性化が高いという結果が得られた(Chiao and Blizinsky 2010)

■感情

・親の文化的規範や子どもの性別に応じて、子どものさまざまな情動を促進したり抑制したりすることが示されている

・Panksepp (1998)の情動神経科学によると、皮質下の情動システムに基づく情動が一次プロセスであり、それが学習と発達の二次プロセスによって形成され、最終的に三次プロセスの皮質認知システムにつながると示唆さ(Panksepp and Solms 2012)

・Affective Neuroscience Personality Scale(ANPS)は,母子間の相互作用や初期の環境経験によって調節される基本的な情動システムの強さと弱さに基づいてパーソナリティが形成されるという,この「神経発達学的アプローチ」に基づいた客観的なツールとして構築

・ビッグ・ファイブは、東洋では低得点、西洋では高得点という東西の二極化につながる知見をもたらす

■ANPS

・普遍的に共有されている皮質下の情動システムに組み込まれている一次プロセスを評価する特権を持つ、より基本的なツールとして位置づけられている

・SEEK,PLAY,CARE,FEAR,SADNESS,ANGERの6つの基本的な情動システムを測定

・ポジティブな感情を表す3つの尺度のうち,

「シーク」は「好奇心が強い,探求心がある,問題解決に向けて努力する」

「プレイ」は「楽しい,身体的接触を伴うゲームをする,ユーモアがある,笑いがある,全体的に幸せで楽しい」

「ケア」は「育てる,困っている動物や人に心が優しい,共感する,愛情を感じる,人の世話をするのが好き」

と定義

・ネガティブな3つの尺度については、

「FEAR」は「不安や緊張を感じる、心配する、決断に悩む、過去の決断を反芻する、眠れない、典型的な勇気がない」

「SADNESS」は「孤独を感じる、頻繁に泣く、愛する人や過去の人間関係について考える、愛する人と一緒にいないときに苦痛を感じる」

「ANGER」は「頭が熱くなる、すぐにイライラする、怒りを言葉や身体で表現する、長く怒り続ける」

と定義

・スピリチュアリティとは、「人類と被造物全体とのつながりを感じ、心の平和と調和を求め、人生の意味を探求すること」(Davis et al.2003)と定義

・オリジナルのANPS研究(Davis et al. 2003)の主な所見は、スペイン、フランス、トルコ、日本、ドイツにおけるANPS標準化研究によって確認

・ポジティブな下位尺度間の正の相互相関とネガティブな下位尺度間の正の相互相関が見られ,ポジティブな感情とネガティブな感情の両方が高次の異文化パーソナリティ因子である可能性があるという命題が強化

 

方法

■参加者:日本の京都(n = 353)、トルコのイスタンブール(n = 327)、ドイツのボン(n = 222)の大学生と大学院生で構成

■資料

・Self-Construal Scale

・ANPS

・Big Five Scales (B5S)

 

結果

■年齢はANPSのすべての下位尺度と負の相関があり、霊性と正の相関があることが判明していたため、本研究では、年齢をすべての分析でコントロールしなければならない共変量とみなした

■女性

・SCS

・「独立した自己概念」ではF(2、464)=45.70、p<0.001、η2=0.26

・トルコ人女性は日本人女性とドイツ人女性よりも有意に高いスコアを示したが、日本人女性とドイツ人女性には有意な差は見られなかった

・「相互に依存した自己概念」ではF(2、464)=3.35、p=0.036、η2=0.26で有意な差

・日本人女性はドイツ人女性よりも有意に高いスコアを示したが、トルコ人女性は日本人女性やドイツ人女性との間に有意な差は見られなかった

・ANPS

・ANGER, F (2, 464) = 43.15, p < .001, η2 = . 26:トルコ人女性はドイツ人女性および日本人女性よりも有意に高いスコア

・CARE, F (2, 464) = 18.36, p < 0.001, η2 = 0.26:トルコ人女性とドイツ人女性は日本人女性よりも有意に高いスコア

・FEAR, F (2, 464) = 24.42, p < 0.001, η2 = 0.26:日本人女性はトルコ人女性やドイツ人女性よりも有意に高いスコア

・Spirituality, F (2, 464) = 44.69, p < 0.001, η2 = 0.26:トルコ人女性は日本人女性およびドイツ人女性よりも有意に高いスコアを示しましたが、日本人女性はドイツ人女性よりも有意に高いスコアを示し

において、3群間で有意な差

・B5S

・経験への開放性、F(2、464)=103.69、p<0.001、η2=0.26:トルコ人女性はドイツ人女性および日本人女性よりも有意に高いスコアを示したのに対し、ドイツ人女性は日本人女性よりも有意に高いスコア

・良心性、F(2、464)=66.44、p<0.001、η2=0.26で有意な差

■男性

・SCS

・「独立的自己概念」では、F(2、430)=34.27、p<0.001、η2=0.26:トルコ人男性は日本人男性およびドイツ人男性よりも有意に高いスコア

・「相互依存的自己概念」では、F(2、430)=9.87、p<0.001、η2=0.26:日本人男性とトルコ人男性はドイツ人男性よりも有意に高いスコア

・ANPS

・ANGER、F(2、430)=32.94、p<0.001、η2=0.26

・CARE、F(2、430)=121.69、p<0.001、η2=0.26

・FEAR、F(2、430)=67.87、p<0.001、η2=0.26

・ PLAY, F (2, 430) = 34.22, p < 0.001, η2 = 0.26

・SADNESS, F (2, 430) = 24.52, p < 0.001, η2 = 0.26

・SEEK, F (2, 430) = 81.51, p < 0.001, η2 = 0.26

・Spirituality, F (2, 430) = 5.71, p = 0.004, η2 = 0.26

・B5S

・経験への開放性、F (2, 430) = 124.51, p < .001, η2 = .26

・良心性、F (2, 430) = 60.52, p < . 001, η2 = .26

・外向性, F (2, 430) = 34.70, p < .001, η2 = .26

・同意性, F (2, 430) = 76.43, p < .001, η2 = .26

・感情の不安定さ, F (2, 430) = 19.16, p < .001, η2 = .26.

■ANPSとB5SのSCSへの負荷量の回帰分析

・3カ国とも独立した自己表現を予測する主な因子は外向性

・ドイツ:独立性は主にB5S因子(経験への開放性が高い、外向性が高い、同意性が低い、情緒的安定性が高い、ANPSのPLAYが低い)によって予測

・日本では、独立した自己概念は、主に低FEAR、高SEEK、高スピリチュアリティなどのANPS特性によって決定され、B5Sでは高Extraversionのみによって決定

・トルコのサンプルでは、ANPSの「怒り」が高いこと、B5Sの「経験への開放性」と「外向性」が高いことのみが独立性の予測因子

・相互依存的な自己構造については、B5Sの予測因子は3カ国でより重複しており、高いAgreeablenessと低いOpenness to Experienceが3カ国すべてで有意な因子

・ドイツの相互依存は、FEARが高く、情緒安定性が低いこと

・日本の相互依存は、CAREとPLAYが高く、外向性が低いこと

・トルコの相互依存は、ANGERが低く、SADNESSが高いことが予測

 

コメント

こういった研究ではしょうがないけど、雑多な感じは否めない。読むのしんどくなってくる。ANPSはどれくらい受け入れられている尺度なんだろう、、興味はあるんだけど。。

 

論文

Özkarar-Gradwohl, F.G., Narita, K., Montag, C. et al. Cross-cultural affective neuroscience personality comparisons of Japan, Turkey and Germany. Cult. Brain 8, 70–95 (2020). https://doi.org/10.1007/s40167-018-0074-2