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東洋と西洋の伝統的な視覚芸術に対する美的嗜好:アイデンティティの問題(Bao et al., Frontiers in Psychology, 2016)

みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

  

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東洋と西洋の伝統的な視覚芸術に対する美的嗜好:アイデンティティの問題(Bao et al., Frontiers in Psychology, 2016)

結論から言うと、絵画の出典と文化集団の間に有意な相互作用が見られ、中国人参加者は伝統的な中国絵画に西洋絵画よりも高い評価を与えたのに対し、西洋人参加者は伝統的な西洋絵画に中国絵画よりも高い評価を与える傾向があった

 

背景

■異なる文化や社会集団の視聴者は、同じ視覚的表示に対して異なる美的体験をする可能性がある(Palmer et al.2013)

・文化の違いは、美があるものにはあてはまるが、他のものにはあてはまらない理由を説明できるかもしれない (Jacobsen, 2010)

■西洋絵画と中国絵画で採用されている絵画的視点は、このように根本的に異なっている

・中国の考え方は、正確な物理的表現や物体の適切な模倣とは無関係に、人間と環境、さらには宇宙との関係のためのダイナミックな構造を強調

■東洋と西洋の風景の違いに関する別の概念(Pöppel, 2006)では、心理学的なレベルで、内的な視点(ドイツ語で「Ich-Nähe」)と外的な視点(ドイツ語で「Ich-Ferne」)を区別

・視覚世界は見る人の目の前に広がっている(Ich-Ferne)

・(東洋画の)鑑賞者は、絵巻物の上に多層の視点が重ねられているため、ある時は空中に位置し(例えば、上から下を見る)、ある時は地上に位置し(例えば、真っ直ぐ前を見る)、ある時は低地に位置し(例えば、遠くの山を見上げる)、ダイナミックに自分の位置を移動させられるような印象を受ける

・この位置の移動によって、鑑賞者が主観的に風景の一部になるという心理的帰結

・帰属感、つまり「Ich-Nähe」

・西洋の画家は物を中心とした場面を好むのに対し、中国の画家は文脈を重視した場面を好む

■芸術表現の文化的差異は経験的に検証可能であり、方法論的にも頑健

・文化と心の相互構成理論(Shweder, 1991; Morling and Lamoreaux, 2008)によれば、人々は自らの文化システムを反映した芸術表現を好むはずである

・これまでの観察結果(Bao et al., 2013b, 2014)で、調性言語と非調性言語を比較したときに、言語環境が時間的処理を形成することが示されており、このプロセスは非公式な学習によって暗黙的なレベルで行われていると考えられている(Pöppel and Bao, 2011)

 

方法

■参加者:46名の大学生(中国人23名、欧米諸国からの留学生23名)が参加

・欧米人被験者の中には、中国に4年以上住んでいる者はいなかった

■材料:中国の伝統的な絵画60点と西洋の古典主義的な絵画60点

・中国絵画、西洋絵画ともに、「風景」と「人物」の2つのカテゴリーに分類

・描かれた絵画は、9世紀から18世紀までの様々な時代のものが選ばれている

■手続き

・すべての絵画はランダムな順序で提示された。各絵は、実験中に1回ずつ提示

・絵を見た後、キーボードの8つのボタンのうち1つを押すことで、その絵の美しさを8点満点で判断

 

結果

■文化様式(中国画と洋画)と画題(風景と人物)を2つの被験者内変数とし、被験者グループ(中国人と西洋人)を1つの被験者間変数とした3元混合分散分析(ANOVA)

・参加者グループと文化スタイルの間に有意な交互作用が見られた {[F(1,44) = 9.247, p < 0.01, ηp2 = 0.174]}

・中国人グループでは、西洋絵画に比べて中国絵画が有意に高いスコアを示しました(5.18 vs. 4.72, p < 0.05)

・西洋人グループでは、逆のパターンが観察

・一方、参加者グループと文化スタイルの主効果はともに有意ではなかった{[F(1,44) = 2.597, p = 0.114, ηp2 = 0.056]および[F(1,44) = 0.010, p = 0.919, ηp2 = 0.000]}

・絵柄の主効果は有意で[F(1,44) = 37.478, p < 0.001, ηp2 = 0.502]、この因子は「文化的スタイル」と相互作用していた[F(1,44) = 19.338, p < 0.001, ηp2 = 0.305]

・中国絵画、西洋絵画ともに、「風景」のほうが「人物」よりも高い評価を得ていた

・西洋の風景画と人物画のスコアの差は、中国のそれよりも有意に大きかった(1.20 vs. 0.60, p < 0.001)

 

考察

■絵は文化的に特定のアイデンティティの感覚を引き起こすと主張されている(Pöppel, 2010)

・西洋の絵を見た西洋人は、文化的なアイデンティティを感じることができ、東洋の絵を見た東洋人も同じことが言える

・増田らは、東アジアの被験者は西洋の被験者に比べて、場面を描くときやモデルの写真を撮るときに、細部や背景を含める傾向があると報告

・中国絵画の美的基盤は、人間と宇宙の調和的な関係を強調する中国の道教思想の哲学に深く影響されている(Law, 2011)

 

コメント

1度読んだのを忘れていて、もう一度読んでしまった。他にも読まないといけないのたくさんあるから、次行きます!

 

 

論文

Bao, Y., Yang, T., Lin, X., Fang, Y., Wang, Y., Pöppel, E., & Lei, Q. (2016). Aesthetic preferences for Eastern and Western traditional visual art: Identity matters. Frontiers in Psychology, 7(OCT), 1–8. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2016.01596