人工物の意図を理解することで、精神状態の帰属に特化した領域の神経活動を喚起する(Steinbeis & Koelsch, Cerebral Cortex, 2009)
みなさんこんにちは。
微かに混じり合う教育と心理学とアートと。
じんぺーです!今日も論文を読んでいきます。
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人工物の意図を理解することで、精神状態の帰属に特化した領域の神経活動を喚起する(Steinbeis & Koelsch, Cerebral Cortex, 2009)
結論から言うと、機能的磁気共鳴イメージングを用いて、被験者が作曲家(つまり人間の産物)が作曲した音楽を、コンピュータが作成した音楽(つまり非人間の産物)ではなく聴いていると思ったときに、精神状態帰属のために一般的に報告されている皮質ネットワーク(前内側前頭前皮質[aMFC]、上側頭溝、側頭極)の活性化が観察されることを明らかにした。
背景
■精神状態の帰属の根底にある神経相関は、前内側前頭前皮質(aMFC)、上側頭溝(STS)/後頭頂頭頂接合部、および側頭極(TP)等からなるネットワークを明らかにするために、広範囲に調査されてきた(Frith and Frith 2003)
・日常生活の中では、人間のエージェント(芸術作品など)の成果物を目の前にして、エージェント自身が明示的に不在の中で、以前から持っていた意図や実行された行動を示唆するようなケースが非常に多く見られる
・無生物が社会的意味のシグナルを発しているのかどうか、また、それを暗黙のうちに理解しようとしているのかどうかは明らかではない
■コンピュータで生成された音楽とは対照的に、被験者が(人による)作曲だと思っているものを聴いたときの脳の反応を測定
・ある条件(作曲者)では、楽曲が作曲されたと信じさせられ、その結果、暗黙のうちに合理的なエージェントの意図の表現を反映していると考えさせられ、別の条件(コンピュータ)では、楽曲がコンピュータプログラムによって生成されたと信じさせられ、一定のルールに従っているにもかかわらず、合理的なエージェントの意図の表現を反映していないと考えさせられた
方法
参加者:12名(平均年齢=24.6歳)
材料:シェーンベルクとウェーベルンの音楽(無調(ドデカフォニック)であり、そのために調性の中心がなく、(特に無知な聴き手にとっては)ややランダムな性格を持っていることが多い)
予備調査:被験者に2人の作曲家の曲から抜粋した140曲を提示し、その曲が作曲されたものであるか、コンピュータで作成されたものであるかを被験者(N = 20)に尋ねた→作曲されたかコンピュータで作成されたかのどちらかである可能性が同じくらい高いと考えられていた60曲を選んだ
手続き:コンピュータによって作曲された、または生成された音楽が提示されることを告げられた。それぞれの曲をどの程度心地よいと感じるかを5件法で回答していく。
・刺激の提示は、各条件で5曲を連続して演奏するブロックデザイン
・参加者は各ブロックと曲の前に、どのような曲(作曲されたものか、コンピュータで生成されたものか)を聴こうとしているのかを指示された
結果
■参加者が音楽の中で表現されている意図について考えたことがあるかどうかという程度であり、コンピュータで作成されたと思われる曲(平均:1.91)よりも作曲された曲(平均:3.41)の方が多かった
■作曲家の状態とコンピュータの状態の脳活動を比較すると、精神状態の帰属に特化した神経解剖学的ネットワーク、すなわちaMFC、左STS、右STS、および左TP、右TPが活性
・aMFCの脳活動は、参加者が作曲された音楽に意図が表現されていると考える度合いと高い相関があった(r = 0.76; P < 0.01)
・この領域が表明されている意図について人々がどの程度考えているかを反映しているという考えを強く支持するものである
コメント
材料はすべて人間の作曲家が作ったもので、「コンピュータが作ったもの」「人間が作ったもの」と言われるだけで、意図性の感じ方が変わり、それに対応してaMFCを中心としたmental state attributionに関連する脳領域が活性化するというとてもおもしろい発見。イントロや結果がとても短いながらインパクトがあって、かっこいいなあと思う。AIとヒトの作品の研究をしているので、そちらにも参考になりそう。
論文
Steinbeis, N., & Koelsch, S. (2009). Understanding the Intentions Behind Man-Made Products Elicits Neural Activity in Areas Dedicated to Mental State Attribution, Cerebral Cortex, 19(3), 619–623. https://doi.org/10.1093/cercor/bhn110