早朝の静けさに浸ること:詩の受容における気分共感仮説の検証 (Lüdtke et al., Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Art, 2014)
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早朝の静けさに浸ること:詩の受容における気分共感仮説の検証 (Lüdtke et al., Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Art, 2014)
結論から言うと、バックグラウンドの要素は感情的な関与を促進し、フォアグラウンドの特徴は美的評価を促進するというモデルの仮定に沿って、両方のプロセスのための異なる予測因子(親しみやすさと状況的な埋め込みは気分の共感を予測し、スタイルやフォームのようなフォアグラウンドの特徴は美的好感を予測)を同定した。
背景
■心理学や読書研究の分野では、詩を読んだときの感情的な経験を扱った実証的研究は、文学的な読書に関する実験的研究と同様に、豊富ではない
■これまでの詩の読解に関する実証的研究では、前景的特徴の認識と利用に焦点が当てられていた
・主に物語の事実について読者に知らせる背景要素で構成されている(暗黙の)テキスト処理のための高速な、自動ルートと前景テキスト要素の(明示的な)処理のための遅いルート
■認知神経詩学のモデルや他の理論的提案に沿って、私たちは詩を読むことで、詩の特徴を鑑賞することに伴う美的感情だけでなく、共感や特別な気分、悲しみなどの他の種類の感情的関与が生じると仮定
■感情と気分の違い
・気分は、時間経過、特異性、意図性の基準によって、感情と最もよく区別
・特定の対象や状況に縛られない、長期的で漠然とした、本質的に客観性のない現象的な経験として理解される (Steyer et al., 1997)
・穏やかな風景に共感することが可能なのは、風景自体が穏やかであるため、風景と感情の対象との相互交換が可能だから
■気分の詩に対するさまざまな種類の感情の出現を探求した実証的研究はなかった
目的
美的好感や気分の誘発がどのように生じるのかを調べる
→読者とテキストの間の相互作用の異なる側面が、美的好感や誘導された気分の出現を予測するために利用できるかどうかを検討した
方法
参加者:ベルリンの大学生20名(女性12名、男性8名、M = 26.6, SD = 6.74)
手続き:
・朗読課題を開始する前に、さまざまな心理生理学的パラメータの測定が準備された(血液量と皮膚伝導率を測定するために、血液量脈波センサーと2つの電極をキーボードの横に置かれた左手の指)
・参加者は静かな部屋でコンピュータのモニターの前に着席し、そこに詩とアンケートが提示
→各詩の行の長さと数が表示されました(図1参照)。スペースバーを押すことで、参加者は詩を一節ずつ読んでいく
・詩の2回目の朗読の後、以下にいくつかの質問が提示され、従属変数である「誘発された気分 induced mood」と「美的好感 aesthetic liking」、そしてこれら2つの変数に影響を与える処理に関連するパラメータを評価
結果
・誘発されたの最も強い予測変数は、「親しみやすさ」と「記述された気分」
・美的好感の最も強い予測変数は「スタイル」
・美的好感と誘導気分は相関しているが(r .64, p .0001)、これら2つの変数を予測する混合モデルは異なる
コメント
バックグラウンドとフォアグラウンドの関係が最も理解できた論文。BGは気分を誘導し、FGは美的な評価を導くというのを、新しい質問紙から同定した。
詩を鑑賞するものからすれば「共感」だし、詩側からすれば、「気分を誘導」しているとなる。没入まではいかないけど、共感。これくらいだったらとても腑に落ちる説明だと思った。この質問紙がどれくらい使われているかによっては、自分の研究でもとってみてもいいんじゃないかと思った。俳句だけじゃなくていろんなフォームの詩歌を勉強したい。
自分の話ですが、研究発表終わってとてもほっとしています。
個人的に超重要な研究発表おわり。
— じんぺー📜Teacher Aide (@hitsuwari5th) 2020年11月6日
学外の発表より学内の発表の方が緊張するというのはいつも同じだなあ。自分レベルじゃ考えられないスーパーな先生たちの前で45分も話せて、コメントも頂けるなんて贅沢すぎる。
論文
Lüdtke, J., Meyer-Sickendieck, B., & Jacobs, A. M. (2014). Immersing in the stillness of an early morning: Testing the mood empathy hypothesis of poetry reception. Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 8(3), 363–377. https://doi.org/10.1037/a0036826