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美という感情 (Brielmann et al., preprint)

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みなさんこんにちは。

教育と心理学について考えているじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

 

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美という感情 (Brielmann et al., preprint)

結論から言うと、哲学者の提唱してきた美の条件を心理学実験に当てはめ、画像や音楽を対象に美的評価を行ってもらった結果、国や様式を超えて、最高評価の美の体験は、「強い喜び」「普遍的な印象」「継続して体験したい」「多様性の中に調和がある」「期待を超える」「意味がある」という6つの側面で強く特徴づけられていることがわかった。

 

背景

■偉大な哲学者のほとんどが美を定義しようとした

・近代心理学の先駆者であるグスタフ・フェヒナー(Gustav Fechner, 1801-1887)は、美とは何かを経験的に検証することに大きな関心を持っていた

・しかし、美的経験の現代モデルにおいては、美はほとんどの場合、他の多くの美的反応の中で定義されていない一つの美的反応として残っている

■現代の美の心理学的理論では、それぞれの理論は、美を体験するために不可欠と考えられるいくつかの次元のみを考慮しているのが一般的

・対照的に、長い哲学的理論は、強烈な美の体験に関連するすべての変数の全体像を描くことを目的とする

 

方法

参加者:各実験について、Amazon mechanical Turk(mTurk)を介して100名以上の参加者を募集

手続き:参加者は、画像(実験1a)、画像と音楽(実験1b)、または記憶(実験2~4)について、同じ12の次元で評価した:美しさ、喜び、驚き、刺激を長く体験したい、欲望から解放されたと感じる、生きていると感じる、体験をもっと理解したい、心の迷い、体験と感じたつながりの数、体験がどこまで物語を語るか、体験がどこまで美しいか(実験4では安堵感)、誰にとってもどこまで美しいか、憧れ

 

結果

■記憶された美しさの方が、生きていると感じていること、欲求から解放されていると感じていること、感じられたつながりの数の点で高い評価(いずれも0.41 ≤ d ≤ 0.63)

・対照的に、記憶された美しい体験は普遍的に美しいとは言えないと評価し、理解したいと思う度合いは低く、即時的な美の体験に比べて憧れは少ないと報告している(いずれも0.32 ≤ d ≤ 0.68)

■平均的な評価パターンには国によって差がある (F(2,304) = 3.50、p < 0.001)

■記憶された安堵に対する評価は、記憶された美しさに対する評価とは大きく異なる(F(1,395) = 0.53、p < 0.001)

 

コメント

哲学的な美と心理学的な美を並べて比較したおもしろい研究。

哲学が「美」の全体的な特徴を記述しようとしたのに対して、心理学的な実証研究はそれらのうち(またはそれらに含まれていないもの)のいくつかをピックアップしているだけという違いが新鮮だった。

いくつかの哲学的概念が美を予測し、いくつかは予測しないという結果は想像通りかなと思う。この研究がアクセプトされればまた新しい実験美学の展開がありそうで楽しみ。

 

論文

Aenne Brielmann, Angelica Nuzzo, Denis Pelli et al. Beauty, the feeling, 12 November 2020, PREPRINT (Version 1) available at Research Square [+https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-103908/v1+]