5-HTTLPRは死の脅威に対する相互依存性と脳反応の関連性を調節する(Luo et al., Human Brain Mapping, 2017)
みなさんこんにちは!
微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。
今日も論文を読んでいきます。
5-HTTLPRは死の脅威に対する相互依存性と脳反応の関連性を調節する(Luo et al., Human Brain Mapping, 2017)
結論から言うと、S/S型対立遺伝子のキャリアではLL型と違って、前帯状体、扁桃体、視床などの感情関連脳領域で死に関連する言葉に対する神経活動と相互依存性の間に正の関連性を示すことはなかった
背景
■脅威管理理論(TMT)
・人間は文化的世界観への信仰(すなわち、現実の本質に関する共通の信念)と自尊心を含む 2 つの不安バッファーを開発し、死に関連した恐怖/不安を鎮めるようにしてきた
■5-HTTLPR
・社会的感受性の個人差にも関連
・S(対L)対立遺伝子キャリアにおいて扁桃体、背側前帯状皮質(ACC)および前島皮質(AI)における否定的感情に対する神経反応の亢進
・5-HTTLPRが文化的形質と認知・情動に関連する脳活動との関連を調節
■2つの競合する仮説
・東アジア(例えば中国人)社会を特徴づける文化的特徴として相互依存性があるとすると [Markus and Kitayama, 1991]、相互依存性は実存不安を緩衝するのに役立つ可能性があり、相互依存性の高い自己構造を持つ中国人の参加者は実存不安を示すことが少ない
・S対立遺伝子キャリアよりもL対立遺伝子キャリアの方が死亡率の脅威に対する感受性が高い
▶中国の集団ではS対立遺伝子キャリアよりもLの方が相互依存性と死亡脅威に対する精神的/神経的反応の間のより強い結合をさらに示唆しているかもしれない
■死亡の脅威に対する脳の複数の領域での活動
・死に関連した言葉は後帯状皮質(PCC)と外側前頭前野の活動が中性の言葉に比べて増加したが、両側AIとACCの活動は減少
方法
■参加者:L対立遺伝子のホモ接合体(L/L遺伝子型群)24人およびS対立遺伝子のホモ接合体(S/S遺伝子型群)24人を含む48人を無作為に選択
■刺激
・漢字2文字からなる90語:3つのカテゴリー(死に関連・死に関連しない否定語・中立語)にそれぞれ30語ずつ分類
結果
■5-HTTLPR遺伝子型と相互依存性の相互作用が、参加者の死亡不安、死亡抑うつ、神経症のスコアを確実に予測する
・S/S群では相互依存性と神経症の間に有意な正の相関が認められた(β=0.52、R2=0.27、P<0.01)が、L/L群では認められなかった(β=-0.24、R2=0.06、P=0.26)
・相互依存性は、L/L対立遺伝子保有者では死亡不安(β=-0.50、R2=0.25、P<0.05)および死亡抑うつ(β=-0.52、R2=0.27、P<0.01)と負の相関を示したが、S/S対立遺伝子保有者では認められなかった(β=0.18および0.05、R2=0.03および0.002、Ps>0.05、図1)
■5-HTTLPRが死に関連した言葉と否定的な言葉(と中立的な言葉)に対する神経反応を調節するか
・固定を見ることと比較すると、死に関連した(しかし、否定的ではない)単語は、すべての参加者に渡ってdACC/SMAにおいて有意に減少した活性を示した
■5-HTTLPRが死に関連した(対中立的な)単語に対する相互依存性と神経反応の関連を緩和するかどうか
・5-HTTLPRと相互依存性との間の有意な相互作用が、dACC、両側丘陵/尾状部、両側視床、および後頭葉皮質において認められた
▶5-HTTLPRがこれらの脳領域において、死に関連した言葉に対する神経活動と相互依存性との関連を緩和することが示唆
■まとめ
・L/L対立遺伝子キャリアでは、S/S対立遺伝子キャリアよりもL/L対立遺伝子キャリアの方が、相互依存性と実存不安との間に、また相互依存性と死亡の脅威に対する脳反応との間に、より強い結合がある
コメント
やっぱり読むの疲れる…まとめに書いていたことが分かればひとまずわかればよいけど、自分の研究に当てはめるとしたら大変だ。
論文
Luo, S., Yu, D., & Han, S. (2017). 5-HTTLPR moderates the association between interdependence and brain responses to mortality threats. Human Brain Mapping, 38, 6157–6171. https://doi.org/10.1002/hbm.23819