セロトニン-1A受容体C-1019G多型が脳機能ネットワークに影響を与える(Zheng, Scientific Reports, 2017)
みなさんこんにちは!
微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。
今日も論文を読んでいきます。
セロトニン-1A受容体C-1019G多型が脳機能ネットワークに影響を与える(Zheng, Scientific Reports, 2017)
結論から言うと、Gキャリアでは、背外側と腹内側の前頭前皮質内のDMNのFCが有意に減少していることが確認された
背景
■セロトニン
・脳内に最も広く分布する神経伝達物質
・セロトニン系の機能障害は、大うつ病やその他の情動障害の重要な要因であると考えられている
・5-HT1A自己受容体の発現が亢進すると、セロトニン作動性ニューロンの発火率が低下し、5-HTの放出が抑制されることが示唆
■5-HT1A受容体遺伝子多型
・自己受容体の発現が5-HT1A受容体遺伝子C(-1019)G多型によって調節される
・具体的には、G対立遺伝子の頻度が高くなると結合能が増大することが示されている
・G対立遺伝子が恐怖発現、特性不安、統合失調症、大うつ病、自殺と関連
・5-HT1A受容体の遺伝子変異は、情動障害に重要な役割
■5-HTR1Aが脳のFCに与える影響
・5-HT1A受容体のアゴニストである8-OH-DPATを投与すると、大脳皮質、海馬、扁桃体、背内側視床でFCが増加
▶これらの脳領域は、5-HT1A受容体を多く発現していることが知られている
・5-HT1A受容体結合能がDMNの活動を予測するように見えることが確認
■1019G対立遺伝子
・瀬状核のセロトニン含有ニューロンのシナプス前における5-HT1A受容体の発現が増加する
・一方、前脳(海馬、大脳皮質)の非セロトニン含有ニューロンのシナプス後における5-HT1A受容体の発現が減少
・C(-1019)G多型:扁桃体、島皮質、前帯状回などの前脳の標的の活動に影響を与える
・G対立遺伝子は、エラー検出や注意処理などの認知能力の低下と関連
方法
■参加者:日本人120名(男性77名、女性43名)を対象
・すべての被験者から空腹時の静脈血を採取し、末梢血からゲノムDNAを抽出
■シード
・DMN:後部帯状皮質、内側前頭前野
・SN:左右の前島皮質
・CEN:左右のDLPFC
結果
■遺伝子多型
・CC:59, CG:28, GG:12
・この方法を支持する過去の報告から、先験的に、被験者を推定リスク対立遺伝子のキャリアーであるGキャリアーとCホモ接合体に二分
■シードベース解析
・DMN:帯状後野、内側前頭前野、外側頭頂葉
・SN:背側前帯状皮質と両側島皮質
・CEN:背外側前頭前野と両側上頭頂部や下側頭回などの領域
■キャリア比較
・G-キャリアは
・DMNでは、左背外側前頭前野)と腹内側前頭前野の皮質のFCが減少した
・SNでは、vmPFCおよび前帯状皮質下層でのFCの有意な減少
・CEN内では両群間でFCに有意な差は見られなかった
・-1019G対立遺伝子がセロトニンシグナルの減少を媒介し、その結果、fMRIにおけるBOLDシグナルが減少する可能性
コメント
手続き、結果ともにシンプルで理解しやすかった。Gアリルは1Aの発現を亢進して、セロトニン神経伝達を抑制しやすく、結果的にDMNの機能的結合も弱めるということが分かってきた。論文読むごとに理解度増えて行っていてうれしい。
論文
Zheng, H., Onoda, K., Wada, Y., Mitaki, S., Nabika, T., & Yamaguchi, S. (2017). Serotonin-1A receptor C-1019G polymorphism affects brain functional networks. Scientific Reports, 7(1), 1–8. https://doi.org/10.1038/s41598-017-12913-3