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幸福に対する全体的な見方:幸福の負の側面を信じる傾向は米国よりも日本の方が強い(Uchida, Psychologia, 2011)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

  

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幸福に対する全体的な見方:幸福の負の側面を信じる傾向は米国よりも日本の方が強い(Uchida, Psychologia, 2011)

結論から言うと、日本のホリスティックな幸福観は、個人の主観的幸福感よりもホリスティックな世界観と関連していることを示した

 

背景

■ホリスティックな幸福観と呼ばれるこのような理論は、日本文化よりもヨーロッパ・アメリカ文化では受け入れられにくいと考えられている

・ヨーロッパ・アメリカ文化圏の人々は、幸福がさらなる幸福をもたらすと思い込んでいる可能性が高い

■ポジティブな幸福観とホリスティックな幸福観

・東アジアの文化的背景では、すべてのものが他のすべてのものとつながっていると想定されるホリスティックな世界秩序の中で、幸福が定義されている

・ヨーロッパ系アメリカ人の文化では、ポジティブとネガティブは相反するものとして捉えられることが多いが、東アジアの文化では、ポジティブとネガティブは補完的なものであり、全体的につながっているとされる

・弁証法の文化的差異に関するいくつかの研究では、アメリカ人に比べて中国人、韓国人、日本人に多く見られることがわかっている

・アメリカではポジティブな感情とネガティブな感情が負の相関関係にあるのに対し、中国や韓国では正の相関関係にあることを明らかにした

・アメリカ人は、幸福とは比較的永続的なポジティブな状態であり、個人的に追求すべきものであると考えている

・一方、東アジアの人々は、幸福とは比較的一過性の対人関係の瞬間であり、ポジティブであると同時に、多くのネガティブな結果を伴うものと考えている

 

研究1

■アメリカ人と日本人の参加者に、Uchida and Kitayama (2009)から得られた5種類の幸福の特徴(ポジティブな快楽体験、個人的達成、社会的調和、超越的再評価、社会的混乱)を提示

■参加者には、それぞれの特徴が幸福の有効な記述であると考えるかどうか、どの程度考えるかを尋ねた

■参加者:18歳から28歳までのアメリカ人大学生43名(男性17名,女性22名,不明4名)と日本人大学生51名(男性28名,女性23名)

■手続き

・参加者はアンケート用紙を手渡され、記入を求められた

・内田・北山(2009)から26個の文を収集し、米国と日本で独自に作成した幸福の5つのカテゴリー

・(1=強く反対、7=強く賛成)で回答

■結果

・平均値を、2(性別)×2(文化)の多変量分散分析(MANOVA):文化の多変量主効果は、F(5, 85) = 7.60, p < 0.0001となり、性別の多変量主効果は無視できるほど小さく(F < 1.2, n.s.)、文化と性別の相互作用もF < 2.1, n.s.

・個人的な達成度(F(1, 89) = 12. 23, p < .0001)、社会的調和(F(1,89) = 15.10, p < .0001)、社会的混乱(F(1,89) = 3.80, p < .05)、超越的再評価(F(1,89) = 9.11, p < .003)において、文化の主効果は有意

・3つのポジティブな幸福の特徴と2つのネガティブな幸福の特徴を組み合わせて、2(文化)×2(感情価)の混合分散分析(ANOVA):感情価の主効果が得られました(F(1, 92) = 48.39, p < 0.0001)。つまり、ポジティブな幸福の特徴は、どちらの文化においてもより有効

・この主効果は文化との相互作用によって修飾され(F(1, 92) = 13.66, p < 0.001)

▶ 日本人はアメリカ人よりも幸福のネガティブな特徴を受け入れる傾向が強い

 

研究2

■日本人の幸福に対する両義的な反応がホリスティックな世界観を反映しているのであれば、そのような反応は、幸福のレベルではなく、ホリスティックな世界観を強く支持する日本人に顕著に見られるはず

■参加者:76名の日本人大学生(男性26名、女性49名、不明1名)

■尺度

・24項目の分析-ホリズム尺度(AHS、Choi et al. 2007)

・幸福の負の側面に対する信念を測定するために、幸福の負の意味を示す7つの項目を修正したものを使用(超越的な再評価を示す項目と社会的混乱の項目が含む)

▶すべての項目を平均化して、"幸福の負の側面に対する信念 "という1つのスコアに

・人生満足度尺度

■結果

・幸福の負の側面への確信とホリスティックな世界観との間には、わずかに有意な相関が見られました(r = .22, p < .06)

・因果論(r = .23, p < .05)と矛盾(r = .30, p < .01)が幸福の負の側面を信じることと正の相関

▶循環的な因果説を信じる人は、幸福の負の側面を信じる可能性が高い

・主観的幸福度が高い人(生活満足度スコア上位10%:M=3.89)と低い人(生活満足度スコア下位10%:M=1.11)を抽出し、幸福の負の側面に対する信念の平均値を比較した:幸福な人と不幸な人の間に有意な差は見られなかった(M = 2.82 vs. 3.32, t(12) = 1.14, p = 0.27)

▶幸福に対する文化的視点の影響は、個人の幸福度によっては実質的に修飾されないことがわかった

▶幸福の負の側面を信じることは、単に幸福でない人から生じる認知バイアスに由来するものではない

 

コメント

京都大学内田先生の論文。幸福感のネガティブな側面を予測するのは、主観的幸福感の低さではなくむしろ、全体論的な幸福感である。Analysis-Holism Scaleの日本語版が欲しくて読んだ!

 

論文

Uchida, Y. (2011).A holistic view of happiness : Belief in the negative side of happiness is more prevalent in Japan than in the United States. Psychologia, 53,
236-245.