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複雑な感情とは何か、どのような条件がそれを育むのか?生涯経験、文化、社会意識(Grossmann & Ellsworth, Current Opinion in Behavioral Sciences, 2017)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

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複雑な感情とは何か、どのような条件がそれを育むのか?生涯経験、文化、社会意識(Grossmann & Ellsworth, Current Opinion in Behavioral Sciences, 2017)

ポイント

■感情

・自分が感じていることを説明する際にいくつかの異なる感情を挙げるのが普通であり,時には矛盾しているように見える用語を使うこともある

・学者たちは,感情の複雑さをさまざまな方法で定義しており,あるときは混合された感情,あるときは時間の経過に伴う感情的経験の変動,あるときは自分の経験についての人々の説明の正確さに言及

■感情の複雑さ(emotional complexity)の定義

・文化・パーソナリティ研究者は、感情の弁証法(ポジティブな感情とネガティブな感情の両方を経験すること)に注目する傾向があり、この種の複雑さは、混合感情や両価性を研究する人たちがしばしば意味するもの

・臨床研究者は,感情の微分化,つまり,グローバルなポジティブ・ネガティブな価値観ではなく,ポジティブな感情とネガティブな感情の多くのニュアンスを持つ,高度に微分化された感情の経験に注目する傾向

・時間枠:1週間や1カ月の間にさまざまな感情を経験した場合、人々の感情生活は複雑であると定義する学者もいれば、同じ出来事に反応して複数の異なる感情を経験した場合を複雑さと定義する学者もいる

■分析レベル(グローバル vs. イベント特化)

・統計的には、長期間にわたるポジティブな感情とネガティブな感情の関係の測定(相関係数で評価)は、同じ出来事に反応してポジティブな感情とネガティブな感情を報告する可能性(共起または両価性の度合いで評価)とは独立している

・ほとんどの国では,時間の経過とともにポジティブな感情とネガティブな感情の両方を経験する傾向は,特定の状況でポジティブな感情とネガティブな感情がより多く共起するという報告とは,弱い関係しかない

・感情の分化と認知的に柔軟な推論との間の関連性は、グローバルな個人差を示す特性レベルの尺度と比較して、状況レベルでより顕著であることが示唆

■文脈的要因

・ある種の感情の複雑さが精神的な健康や認知的な利点をもたらす可能性があることを考えると、複雑さを促進するような文脈を理解することが重要

・加齢は、個人の生涯にわたって経験や目標が変化するため、感情の複雑さを研究する上で有益な背景

・DIT(Dynamic Integration Theory)では,複雑さは中年期まで増加するが,高齢期になると加齢に伴う認知機能の低下によって減少

・SST(Socioemotional Selectivity Theory)は、加齢に伴い、親しい人との社会的・情緒的な経験を優先する動機が変化することで、複雑さが高齢になるにつれて増加

▶DITモデルを支持する学者もいれば、年齢に関連した効果がないとする学者、SSTモデルを支持する学者もいる

・米国では年齢効果が見られなかったのに対し、日本では高齢者が若年層の日本人よりもポジティブな感情を区別する傾向が強いことを観察

・東アジア人やアジア系アメリカ人のサンプルは、欧米人のサンプルよりも感情の弁証法が強いことが実証

 

コメント

感情の複雑性は弁証法的感情(混ざり合っている感情の程度)と微分的感情(ポジティブとネガティブな感情をそれぞれどれくらい感じたか)という2つの考え方、またグローバル(1週間でどのくらいmixed emotionsを感じたか)か状況的(1つの事象でどの程度mixed emotionsを感じているか)などで体系化されていることがなんとなくわかった。実証実験読みたい。

 

論文

Grossmann, I., & Ellsworth, P. C. (2017). What are mixed emotions and what conditions foster them? Life-span experiences, culture and social awareness. Current Opinion in Behavioral Sciences, 15, 1–5. https://doi.org/10.1016/j.cobeha.2017.05.001