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セロトニン受容体遺伝子(5-HT1A)がアレキシサイミア特性と愛着志向を調節する (Gong et al., Psychoneuroendocrinology, 2014)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 
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セロトニン受容体遺伝子(5-HT1A)がアレキシサイミア特性と愛着志向を調節する (Gong et al., Psychoneuroendocrinology, 2014)

結論から言うと、CG/GG遺伝子型を持つ個人は、CC遺伝子型を持つ個人に比べて、20項目のトロント・アレクシタミア尺度(TAS-20)の合計得点が有意に高かった。

 

背景

■アレキシサイミア

・自分の感情を識別したり表現したりすることが困難で、想像力に欠け、外向的な思考スタイルを特徴とする亜臨床症状の集まり (Taylor, 1984)

・感情の制御障害(Stasiewiczら、2012年)および健康関連のQOL(生活の質)に関連

・うつ病や身体表現性疼痛などの精神科患者の最大50%に発症

・一般人口の約8%にも発症

・双子の研究では、アレキシサイミアの個人差の大部分が遺伝的要因に起因することが確認されており、その遺伝率は30~42%

■セロトニン

・LL遺伝子型を持つ人は、SS/LS遺伝子型を持つ人と比較して、アレキシサイミアの特徴を評価するために一般的に使用されている自己報告書であるToronto Alexithymia Scale (TAS-20)のスコアが高い

5-HTTの活性が高いとセロトニンの取り込み率が高くなり、シナプス間隙のセロトニン濃度が低くなるという関連性があることから、脳内のセロトニン濃度が個人のアレキシサイミア特性に影響を与えている可能性

・-HTTLPRの遺伝子型がL/Lの人は、L/SまたはS/Sの人に比べて、TAS-20およびDIFサブスケールのスコアが高いことも示されている

・小児期において、5-HTTLPRのL対立遺伝子は、アレキシサイミアの発症に関係する前帯状皮質と扁桃体の灰白質体積を増加させ(Pezawasら、2005年)、アレキシサイミア症状のリスクを高めることにつながる

■セロトニン受容体

・脳内のセロトニン濃度は、セロトニントランスポーター(Heils et al., 1996)だけでなく、セロトニン受容体によっても調節

・5-HT1Aは、哺乳類の脳内で最も多く発現しているセロトニン受容体の1つ

・大脳皮質や海馬では、5-HTニューロンの樹状突起に存在する5-HT1A受容体の興奮がセロトニン作動性ニューロンの発火率を低下させ、セロトニンの放出に負のフィードバックを生じさせる

・C-1019Gの多型は、5-HT1A受容体の発現を制御

▶C対立遺伝子と比較して、G対立遺伝子は縫線核での発現が高く、発火頻度やシナプス間隙のセロトニン濃度の低下につながる

・5-HT1AのC-1019Gが精神疾患の発症に関与しており、Gアリルはうつ病のリスクが高いことが示されている(Anttilaら、2007年、Savitzら、2009年、Kishiら、2013年)

■アレキシサイミアと不安な愛着志向との関連が明らかになっている

・Alexithymiaと不安な愛着志向は、心理的な症状や病因が重なり合っており、どちらも感情を表現すること、感情をコントロールすること、社会的・対人的な状況に対処することが困難

・どちらも幼少期のトラウマ的な経験がこれらの困難の原因の1つであるとされている

 

方法

■参加者:漢民族の学生504名(70%が女性、平均年齢=24.1±1.4歳)

■手続き

・TAS-20 (Bagby et al., 1994)の中国語版(Yi et al., 2003):3つの下位尺度に分けられ、1つは、感情を識別して体の感覚と区別することの難しさ(DIF)、1つは、感情を記述して伝えることの難しさ(DDF)、そして3つ目は、コミュニケーションの際に内的な感情や根本的な原因よりも外的な出来事を記述することの好ましさ(EOT)

・18項目の改訂成人愛着尺度(RAAS)(Collins, 1996)の中国語版(Wu et al., 2004):親密性下位尺度,依存性下位尺度,不安下位尺度

 

結果

■Alexithymiaテスト

・CC遺伝子型を持つ人(M±SD:49.9±8.6)とCG/GG遺伝子型を持つ人(51.7±8.6)の間で、トータルスコアに有意差

・TAS-20の下位尺度については、3(下位尺度:DIF vs. DDF vs. EOT)×2(遺伝子型:CC vs. CG/GG)反復測定ANOVA:

・遺伝子型の主効果は、F(1,502) = 4.401, p = 0.036

・CC遺伝子型の人(17.0±4.4)は、CG/GG遺伝子型の人(18.0±4.2)に比べて、DIFサブスケール(Difficulty Identifying Feelings)で感情を識別することに困難を感じない

■愛着度テスト

・TAS-20の総得点は、RAASの親密性下位尺度の得点と負の相関があり、r = -.280, p < .001、依存性下位尺度の得点とは、r = -.256, p < .001、不安性下位尺度の得点とは正の相関r = .398, p < .00。

・RAASの下位尺度については、下位尺度を参加者内因子、遺伝子型を参加者間因子としたANOVA:

・親密さの下位尺度では、CC遺伝子型の人(3.62±0.58)がCG/GG遺伝子型の人(3.51±0.57)よりも高いスコアを報告

 

考察

・5-HT1AのC-1019Gはシナプス間隙のセロトニンレベルを調節し、G対立遺伝子はセロトニンレベルの低下につながり(Lemondeら、2003年、Albert and Lemonde、2004年、Czesakら、2012年)、扁桃体の反応性とボリュームに大きな影響を及ぼす

・5-HTTは、セロトニンを不活性化するハブとして、シナプス前膜に分布しているのに対し(Zhou et al.1998)、5-HT1A受容体は、セロトニン放出のモジュレーターとして、シナプス前と後の両方の膜に分布

・シナプス前膜の5-HT1A受容体を刺激すると、神経末端からのセロトニン放出が抑制され(Fink and Gothert, 2007)、シナプス間隙のセロトニンレベルが低下、また、シナプス前膜の5-HTTを活性化すると、シナプス間隙におけるセロトニンの再取り込みが促進され、セロトニン濃度が低下

・シナプス後膜の5-HT1A受容体を刺激すると、シナプス前膜からのセロトニン放出を抑制するだけでなく(Hannon and Hoyer, 2008)、シナプス後の神経細胞の活動を抑制することができます(Fink and Gothert, 2007)。アレキシサイミアも5-HT1Aがシナプス後の膜に作用することに関係していると考えられる

・セロトニン受容体2遺伝子(5-HT2A)の機能的多型(T102C, rs6313)が回避型愛着と関連しており、受容体の発現レベルが高いTT遺伝子型の人は、CC/CT遺伝子型の人よりも回避のスコアが高いことが示されていた

 

コメント

短めの論文だけど、最後の考察でセロトニンと受容体のこと詳しく書いていて勉強になる。

 

論文

Gong, P., Liu, J., Li, S., & Zhou, X. (2014). Serotonin receptor gene (5-HT1A) modulates alexithymic characteristics and attachment orientation. Psychoneuroendocrinology, 50, 274-279. https://doi.org/10.1016/j.psyneuen.2014.09.001.