【教育系書籍レビュー】学習指導の「足並みバイアス」を乗り越える
みなさんこんにちは!
今日は久しぶりに書評書いてみたいと思います!前回の書評は、、
ちょうど1年くらい前に書いたななつめのやつはしさんのご著書でしたね!
日が空いてしまった…
アウトプットベースの読書は刺激的でよいので、本当はもう少しやりたいのです。
と、前置きはこれくらいにしてさっそく行ってみましょう!
渡辺道治著『学習指導の「足並みバイアス」を乗り越える』
まずは、本の概要から簡単に紹介したいと思います。
著者の渡辺先生は、Twitterでは「花は咲く」というインパクトのあるお名前で発信されています。(ご著書もツイートされているし、大丈夫なはず…)
渡辺先生のツイートを見ている方はわかると思いますが、何といっても日々の学級通信の質と量に驚かされます。本書でもたびたび引用されていることが分かります。
(ストックがはんぱない…)
学級通信は、渡辺先生の発信の1つの柱で、その他にも大変有益な発信ばかりですので、フォローまだの方はお忘れなく!これが初の著書ということですが、既に他3冊を執筆中とのことで、人ってそんな同時進行で書き物できるんですね!と衝撃しかありません…
そんな記念すべき1冊目、『学習指導の「足並みバイアス」を乗り越える』について本日、本が届いてさーっと1周目読んでみましたので、ここに簡単に感想をまとめてみたいと思います。いつものスタンスと変わらずですが、ぼくに刺さったところを中心に書くので、気になった方、全容が知りたい方は、実際に本書を手に取ってみてくださいね!
「足並みバイアス」なんでだめなの??
まず、「足並みバイアス」とは渡辺先生の造語です。本書のタイトルにもなっているくらいなので、このキーワードが大きなテーマとなります。
正式には「足並みを揃えようバイアス」と言い、学校現場の思考や行動を統一しようという偏りのことです。
本書の冒頭で、この「足並みバイアス」がもたらす害について述べられています。そこでまず、うんうんと激しくうなずきました。渡辺先生が挙げられている「足並みバイアス」の害は大きく分けて2つあります。そのまま引きます。
1.変化に弱い
2.学校や学級の「裁量」が無視され、創造の喜びが奪われる
p. 17
の2つです。
変化に弱い
1点目の「変化に弱い」という点については、このコロナの大流行とそれにおける教育現場の対応をみると明らかだと思います。他の学級・学年・学校ではやっていないことを現場判断で行っていくことの難しさがよく分かりました。
本書でも引用されている文科省の声明も強烈なインパクトとして、頭に残っています。2020年の5月に出されたその声明では、「一律にできないから」というのは理由にならないということが言われていました(めちゃくちゃざっくりです…)。
もちろん、これは教育現場に限ったことではなく、変化に弱い日本社会のほんの一部かもしれませんが、VUCAの時代と言われて久しく、これまた本書p.29 で示されている「未来に必要とされるスキル」に「認識の柔軟性」が入っていることを考慮すると、変化に弱いということはさまざまな危険をはらんでいると思います。
学校や学級の「裁量」が無視され、創造の喜びが奪われる
これも常々思っていることで、本当にそうだよなあと共感しました。
先生でもないぼくがどこでそれを思うというと、発信をはじめてから出会った面白いクリエイティブ先生方が先生をやめていかれる瞬間です。
自分のやりたいことが制限され、できなくなった時、人は楽しくなくなります。その瞬間、別な環境に身を置いて自分を表現しよう、という思考が出てくるのは自然な流れだと思います。それは先生だけでなく子どもも同じですね!
(本書第2章(p.39~)では、そんな子どもに選択や意思決定をゆだね、「楽しむ」ことを喚起する「ノマドスタディ」というものが丁寧に紹介されています。)
一方で、「制約のある中で、最大限自分のやりたいことをやる」というかっこよすぎる先生方にもたくさん出会ってきましたが(渡辺先生も間違いなくその1人)、またそれは話がそれてしまうので、別の機会に!
「足並みバイアス」の正体とは??
次に、そんな「足並みバイアス」の正体を簡単に紹介します。
お気づきかもしれませんが、ぼくは専ら先生の働き方やシステム、心理に興味があるので、ここで紹介している内容もそのあたりのことが多くなります。先ほどちらっと紹介した「ノマドスタディ」やその他授業、宿題などについては触れないので、そこに興味ある人はぜひ買ってみてください!(というかみんな買ってください!笑)
ここは、ぼくが1番心動いたパートでもあります。先生方への尊敬の念と悲しさが同時にこみあげてきました。けっこうショッキングなのですが、渡辺先生いわく、「足並みバイアス」の正体は、「恐れ」です。
引用します。
先生方は、常に「恐れ」と戦っています。それは、「保護者」への恐れであったり、「地域」への恐れであったり、「失敗」への恐れであったり、「正しさ」への恐れであったり、「新しさ」への恐れであったり、様々です。そして、恐れと戦いながら、懸命に「何か」を守っています。それは、厳しい環境に耐えながらも必死に大切なもの(信念や矜持という名の旗)を守り続けた勇者のようでもあります。
p.19
どうですか。ぼくは、涙が出てきそうでした。いつも本当にありがとうございます、という感謝の念もこみあげてきます。既に長いですが、もう少し引かせてください。
自分の痛みや苦しみに目をつぶりながらも守ってきた旗は、きっと「自分のため」では抜けないのではないかと思います。でも「誰かのため」「子どもたちのため」なら、きっと勇気を持って引き抜けるのではないでしょうか。
p.19
この文章からとても力を感じました。子どもだけでなく、同僚の先生方も勇気づけている渡辺先生の姿が思い浮かびました。
「足並みバイアス」の乗り越え方
そして、本書は、「足並みバイアス」を解消するためには、という風な話に進んでいくのですが……
ここでは、それは書きません。
ぜひその方法を知りたい方は本書を手に取ってみてください!
また、上述したように、本書のほんの一部しかまとめることができていませんので、これから読まれる方はぜひ楽しみにしていてください!
「社会」への恐れを軽減するお手伝いを
さて、本の心に残ったポイントをまとめてみましたが、最後に、自分が考えたことをつらつらと書いてみます。
渡辺先生によると「足並みバイアス」は「恐れ」からくるということでした。本書には書かれていませんでしたが、先生の恐れの中には「社会への恐れ」があると思っています。先生のちょっとした不祥事があると過剰にやり玉にあげられたり、SNSでも先生の一挙手一投足を監視しているかのような様子(例:採点への非難)が見られたりします。
そういった社会が先生をチェックするという状況は、先生に恐れを抱かせる一因になると思います。
本来、教育という営みは社会全体でなされるものだと思います。社会が学校や先生に恐れを抱かせる状況というのはやはりおかしいと思います。それによって学校や先生も力を発揮できない(「足並みバイアス」によって)というのは、社会にとってみてもマイナスになっています。
本書を読んで、ぼくはそういった先生と社会の関係、そして、「恐れ」の存在を改めて認識しました。さらに、こういった社会の雰囲気を変えたいぼくやぼくたち(Teacher Aide)のやるべきことも再確認しました!
というわけで、最後自分の話になってしまいましたが、ぼく自身も勇気づけられた1冊でした!
みなさんの感想もぜひ教えてくださいね~
ここまで読んでくださりありがとうございました!!