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共感型学習モデルを用いた中学校の美術授業の効果について(You et al., Current Psychology, 2020)

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みなさんこんにちは!

じんぺーです。今日も論文を読んでいきます。

 

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共感型学習モデルを用いた中学校の美術授業の効果について(You et al., Current Psychology, 2020)

結論から言うと、実験群は共感学習モデルを用いた美術の授業を受け、対照群は伝統的な講義形式の美術の授業を受けた結果、実験グループが受けた共感型学習は、従来の講義中心の学習に比べて、生徒の共感性や授業への参加度に強いプラスの効果があったが、生徒の自尊心にはそのようなプラスの効果は見られなかった。

 

背景

■Leeら(2014)は,韓国のカリキュラムおよび課外の学校活動において,教科教育だけでなく人格育成を促進するために,共感に基づく学習モデルを開発

■最近の研究では、生徒の共感がもたらす認知面や行動面でのポジティブな結果にまで範囲が広がっている

・生徒の他者への共感能力のレベルは,

・向社会的行動の増加(Schonert-Reichl et al.2012)

・攻撃性の減少(Björkqvist et al.2000)

・社会的偏見の減少(Stephan and Finlay 1999)

・と有意に関連

■学生の共感能力を向上させるための様々な教育方法論が開発されている(Schonert-Reichl et al. 2012; Castillo et al. 2013)

・共感性に基づくカリキュラムと生徒の社会情緒的能力や学業成績との関係が検討

・文学小説を通じて他人の心に触れる習慣があると、他人の考えや感情を理解する能力が向上することが予測

・教室での文学作品の入手が容易であるためか、教育における共感に関する研究は、ほとんどが読書・文学教育の分野で行われてきた(Feshbach and Feshbach 2009)

■美術教育における共感に焦点を当てた研究は限られていました(Goldstein and Winner 2012)

・個人がアートを鑑賞したり、自分で制作したりすることで、自分やアーティスト、世界に対する意識が高まり、共感や理解のきっかけになる可能性がある(Potash et al.2013)

・Jeffers(2009)は、美術の授業が共感能力を育むユニークな環境であると指摘

・美術の授業で、共感の意識と配慮する能力を育てることを目的とした指導戦略を取り入れた場合、生徒は他者のアイデアや意見に耳を傾けるようになり、作品はより表現力豊かになり、彼らの価値観や経験が反映されるようになります(Stout 1999)

 

方法

■参加者:実験群19名(男子11名、女子8名)、対照群18名(男子10名、女子8名)の合計37名の生徒(中学生)

■デザインと手続き

・対照群の事前テスト-事後テストデザイン

・事前テストと事後テストには、共感、自尊心、授業への参加に関する同じ質問を用いた

・両クラスの生徒は、絵画、ドローイング、コラージュ、撮影など様々な活動を含むアートプロジェクトを完成させるよう求められた

・実験グループは、「共感」をテーマにして作品を作り、完成した作品を友達と共有することを求められた

・一方、対照群は、より伝統的な教師中心の授業に参加し、教師が教科書から選んだテーマで、特に「共感」に焦点を当てずに個人で課題を作成し、提出した

・対照群、実験群ともに、3ヶ月の間に、1回45分のレッスンを14回行った

・レッスン終了後、各グループにポストテストを実施

・実験グループの教師と生徒は、14回の授業終了後に書面によるインタビューに参加し、共感学習についての認識を書いてもらった

■尺度

・IRI

・自尊心

・授業への参加:Chaら(2010)が韓国で開発した「学習者の授業参加度測定法」:授業の準備(例:「授業前に授業の目的や内容を確認する」)、授業の活動(例:「先生やクラスメートの話に注意を払う」)、コミュニケーション(例:「わからないことや知りたいことを質問する」)、授業の展開(例:「ウェブサイトの掲示板で自分の意見や質問を述べる」)、授業への熱意(例:「授業で学んだことに興味を持つ」)の5つの下位尺度

 

結果

■操作チェックなど

・プレテストのスコアについて独立標本のt-検定:共感度,自尊心,授業への参加度には,両グループ間で有意な差はなく,同質性が認められた

■実験グループと対照グループの共感度、自尊心、授業への参加度のスコアを比較するために、独立標本のt検定とMANOVA

・共感度の合計スコアと認知的共感度のスコアに有意な差

・実験群と対照群の自尊心の合計スコアには、有意な差がなかった

・実験群の学生は、対照群の学生に比べて、授業参加全般、特に授業活動と熱意において高いスコアを報告

 

コメント

さくっと読める興味深い論文。なんでポスト-プレの変化でt検定していないんだろうとは思った。結果もっとくっきり出そうなのに。

 

 

論文

You, S., Lee, J., Lee, Y., & Kim, E. K. (2020). The effects of middle school art class with an empathy-based learning model. Current Psychology, 39(5), 1819–1829. https://doi.org/10.1007/s12144-018-9885-8