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これからの時代に必要な力はこれ【心理学書籍レビュー③】『ネガティブ・ケイパビリティ』帚木蓬生著

f:id:jin428:20190111233224j:plainこんにちは!

教育と心理学について日々考えているじんぺーです。

前回の書籍レビューは堀江さんの著書『すべての教育は洗脳である』でした。

 

 

www.jinpe.biz

 

この本をレビューするのは正直ビビっていたのですが、何事もなくてよかったです笑

 

 

さあ、そして、今回は久しぶりに心理学っぽい本をチョイスしました!帚木蓬生さんの『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』です!

(今回もKindleで読みました~)

 

『ネガティブ・ケイパビリティ』なんのこっちゃ分からない方も多いと思います~

 

ゆっくり読んでいきましょう!

 

 

 

そもそもネガティブ・ケイパビリティとは?

まず、ネガティブ・ケイパビリティ(negative capability 負の能力もしくは陰性能力)とは、

 

「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」 

 

あるいは、

 

「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」 

 

のことです。これでもまだまだなんのこっちゃわからないと思います。進めます!

 

 

ネガティブ・ケイパビリティが最初に使われたのは詩の世界?

心理学本として本書をレビューし、著者の帚木さんは精神科医ですが、このネガティブ・ケイパビリティという言葉は、キーツという詩人によって初めて使われました。

 

 

キーツがネガティブ・ケイパビリティを有するとしていた作家はかの有名なシェイクスピアです。しかし、有するとは言ったものの、シェイクスピアのどこがすごいのか、キーツ自身は語っていないといいます。語ったところで言い尽くせないと考えていたのです。

 

そこで本書の帚木さんはシェイクスピアの作品について、こう解説しています。

 

どの作品にも、シェイクスピア自身の意見なり信条は出ていません。不確実さが、大きな塊として目の前に放り出されているので、あとは読者が読み解くだけです。読み解く視点も方向もおのずと多様になります。シェイクスピアは、この理解と不理解の境界、読者が気付くか気付かないかの微妙な暗闇に、一条の薄い光を入れる方法をとっています。

 

少し上のネガティブ・ケイパビリティの意味するところに近い気がしませんか?

 

つまり、シェイクスピアは、本来なら白黒つけたいような展開でも、あえてぼんやりとさせておき、読者に判断させる技を持っていたのです。後でも述べますが、人間は答えが合っているかどうかわからないような状況にいると不安になり、できれば早く答えを知りたいと思う傾向があります。その、ある種気持ち悪さともいうべきものを抱えておく能力がネガティブ・ケイパビリティというわけです。

 

 

ちなみに、本書では、短い生涯の中でどのようにして、キーツがネガティブ・ケイパビリティにたどり着いたか、詳しく述べられているので、そこにも注目してみてください。ドラマチックですよ~

 

 

ネガティブ・ケイパビリティ、分かってきましたかね~?

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人間の脳はネガティブ・ケイパビリティが苦手

本書の第3章のタイトルは「分かりたがる脳」です。

 

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このタイトルがこれから述べることをほぼ完璧にまとめているとも思いますが、詳しく見ていきましょう。

 

例えば、みなさまの家の本棚の漫画が巻の順番で並んでおらずバラバラの状態であったとします。その時、みなさまはどんな気持ちになるでしょうか?

 

どこかもやもやするような、気持ち悪いような気分になりませんか。

 

帚木さんによると、これは脳が分かりたがっている証拠だといいます。

 

他にもなんでもカテゴリ化やマニュアル化してしまいたくなったり、音楽や絵画に戸惑ってしまったりするのもすべて、分かりたがる脳が原因と言います。

 

 

しかし、自分の脳が分かりたがっていたとしても、そのもやもやした不安のようなものに耐える力がネガティブ・ケイパビリティです!(何回でも言いますよ~)

 

ネガティブ・ケイパビリティの反対はもちろんポジティブ・ケイパビリティ

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ネガティブの反対はポジティブです。ネガティブ・ケイパビリティがあるならポジティブ・ケイパビリティもあります。

 

こちらの方がしっくりくる人が多いと思います。というのも、現代の教育で養成するのはこのポジティブ・ケイパビリティだからです。

 

そうです、本書第9章のテーマは「教育とネガティブ・ケイパビリティ」です。この記事を読んでくださっているみなさまには興味のある人も多いと思います!

 

 

さて、ポジティブ・ケイパビリティとは簡単に言えば、問題解決の能力です。「問題解決能力」といえば、たしかに教育の世界ではよく聞く言葉ですし、そんなに悪いものには思えません。

 

 

しかし、ここで考えてほしいのは、解決できる問題より解決できない問題の方がはるかに多いという事実です。例えば、よく討論のテーマになる「原発賛成 or 反対?」とか「安楽死賛成 or 反対?」のような問や、哲学的な「なぜ人間は生まれてきたのか?」のような問には誰もが納得する答えがありませんよね。

 

ここで少しネガティブ・ケイパビリティから離れ、帚木さんの教育論を見てみます。

 

帚木さんは、その解決できない問題で世の中はあふれているという事実が伝達されていないことを指摘します。

 

さらに、教育について、

 

学べば学ぶほど、未知の世界が広がっていく。学習すればするほど、その道がどこまでも続いているのが分かる。あれが峠だと思って坂を登りつめても、またその後ろに、もう一つ高い山が見える。そこで登るのをやめてもいいのですが、見たからにはあの峠に辿りついてみたい。それが人の心の常であり、学びの力でしょう。つまり、答えの出ない問題を探し続ける挑戦こそが教育の神髄でしょう。

 

と書かれています。力強くて素敵です✨

 

この章を読んでいて、激しく思い浮かんだ曲があります。けっこう最近の曲なのですが、RADWIMPSの「正解」という曲です。

 

サビの部分の歌詞がまさにポジティブ・ケイパビリティそしてネガティブ・ケイパビリティを彷彿とさせます。

 

あぁ 答えがある問いばかりを 教わってきたよ そのせいだろうか

僕たちが知りたかったのは いつも正解などまだ銀河にもない

一番大切な君と 仲直りの仕方

大好きなあの子の 心の振り向かせ方

何一つ見えない 僕らの未来だから

答えがすでにある 問いなんかに用などはない

 

「答えがある問いばかりを教わってきた」というのは「学校で」だと思います。そして、答えのない課題に向かっていこうとする詞が描かれています。まさに!と思いました。

 

曲もいいので、ぜひ聴いてみてくださいね~

 


【18祭】「正解」RADWIMPSと1000人の18歳、感動の歌声

 

日薬と目薬 

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では、そのどうにも対処しようのない事態の時、ネガティブ・ケイパビリティで耐えた先には何があるのでしょう。

 

帚木さんは精神科医であり、相談に来られる方が抱える問題の多くがこれといった解決策がないものだといいます。問題なんて人それぞれなので、当然ともいえます。

 

そんな中で、ネガティブ・ケイパビリティと同じくらい大切にしているキーワードがあって、それが「日薬と目薬」です。

 

簡単に言えば「日薬」というのが、「時が解決してくれる」というものです。けんかした後の仲直りの仕方がわからない、でも何日か経ったらけんかしていたことも忘れるくらい元通りになっていることも多いと思います。これが「日薬」です。

 

もう一方の「目薬」は、「誰かが見ているよ。あなたの苦しみを理解している人がいるよ。」というものです。1人で解決しない問題と対峙し続けるのはつらく、根気が要るものです。そこに寄り添ってくれる人がいるかどうかが大切なのです。帚木さんのような精神科医の先生がその役割を担ってくれているのでしょう。

 

 

ざっと、説明しましたが、この2つのキーワードもぜひネガティブ・ケイパビリティと一緒に覚えておいてもらいたいなあと思います。

 

最後に:これからの時代にネガティブ・ケイパビリティが活きてくる

長くなってきたので、そろそろ終わります。

 

ネガティブ・ケイパビリティについて理解して頂けたでしょうか?

 

最後に、どうしてこれからの時代にネガティブ・ケイパビリティが必要なのかを書きます。

 

2045年には、人工知能は人間の脳を超えると言われたり、今ある仕事の多くがなくなると言われたり、将来に対する不確実性が増してくると思います。2045年どころか、来年、いや明日すら自分がどうなっているかわからない世界だと思います。(災害もあるしね)

 

 

解決できない問題が多く降りかかってくることもあるかもしれません。

 

 

そんな時こそ、ネガティブ・ケイパビリティです。とりあえず、不安定な状態を耐える力が活きてくると思うんです。

 

 

そういうわけで、これからの時代はネガティブ・ケイパビリティが必要という記事を書きました。伝えきれなかったことも多いので、ぜひ本書に触れてみてください~