給特法とは?全教員(になりたい人)は知っておくべき法律がここに。【教育系書籍レビュー➀後半】『教師のブラック残業』内田良・斉藤ひでみ編著
【10/22追記】
なんとTwitterで記事更新のツイートをしたら、著者の1人である斉藤ひでみさんからコメントがありました。本当に嬉しく励みになります!ありがとうございます!
内田先生との共著『教師のブラック残業』について、ブログで紹介して下さってる!
— 斉藤ひでみ/現職教員 (@kimamanigo0815) 2018年10月22日
しかも一回じゃ語り尽くせないからと、二回に渡って!
本当に有難うございます!
果たして #給特法 がどうなるか、ここから1〜2ヶ月間の国の審議にかかっています。。
ぜひ今、多くの方に手に取ってもらいたいです。 https://t.co/4avfXtn7B5
こんにちは😊
教育と心理学とロックンロールについて、日々考えているじんぺーです😊
【教育系書籍レビュー】シリーズを始めています。第1弾である前回記事はこちらから↓
内容盛りだくさん過ぎて、1回でまとめ切れなかったので、2回に分けて、今回は後半戦に入っていきたいと思います!
第1弾で扱っているのはこちらの本です。
章ごとに見ていっていました。今回は第3章からですね!いってみましょう〜
第3章:教師が倒れたときいったいどうなるのか?
こちらの章は、内田良先生ではなく、工藤祥子さんという方が書かれています。
この方は中学校の教諭をしていた夫を過労死で亡くしたという過去を持ちます。
壮絶なお話なので、工藤さん自らが書かれた文章を読んで欲しいというのを先に言っておきます。
このようなレビューではほんとのほんとである筆者の思いが伝わりにくいと思いますので。
中でも気になったところを挙げてみます。
周りの人たちみんなが認めても「過労死」と認定されない理由
旦那さんが過労死されてから、工藤さんは公務災害の申請の準備を進めます。
教師に災害が生じた場合、労災ではなく、公務災害となるそうです。
その公務災害の申請が大変といいます。
第1のハードル:所属長でないと申請できない
労災は自分自身で申請できますが、公務災害は所属長、つまりここでは、校長しか申請できません。
普通の公務災害と過労死の異なる点として、校長に大きな責任があるというのがあります。
つまり、亡くなった教員に、業務を命じたのは校長であり、過労死させたのも校長と言えなくはないということです。
(少し大げさに言っていますが)
となると、なかなか自分の非を認める(過労死を認める)ことになる公務災害の申請をしようとはしないですよね。
ここで申請を諦めてしまう人も多いといいます。
申請をしてもらった工藤さんはご自身のことを恵まれていたと書かれています。
第2のハードル: ここでも立ちはだかる給特法
無事公務災害を申請することができた工藤さんですが、申請の約1年半後に届いた結果を見ると、なんと「不認定」
それは、次の理由によります。
夫がした仕事はすべて「通常業務の範囲内」とされ、時間外に行った仕事は「証拠がない」「自主的にやった」と否定された。
—P77
読んでいるだけで悔しさが込み上げてきます。
前回説明した給特法は、「残業(代)なしを規定した法律」でした。
つまり、教員には残業という概念が存在せず、時間外に行った業務は自主的なものだと片付けられてしまうのです。
教員のお仕事は記録に残らない部分も多く、時間外労働の証明にとても苦労されていた様子が伝わってきます。
最終的に工藤さんは、部活予定表、行事予定表、パソコンのログイン/ログオフ記録などを徹底的に調べあげ、なんとか、それでもなんとか、公務災害の認定を受けることができたようです。
知らない現実、まだまだあるなと感じてしまいます。
読み疲れた方、コーヒーどうぞ。
第4章:労働問題から見た教員の働き方
この章では、労働問題のスペシャリストである2人の弁護士(嶋﨑量さん、松丸正さん)が登場します。
法曹界から見ると教育界ってどうなの?という視点で話が進みます。
教師は聖職者?いえいえ、労働者です。
もともと、教師は聖職者が担っていた時代の話から、教師は聖職者扱いされることが、今でもあるようですね。
そういう肩書きを付けられると、我慢することが美みたいになってしまいます。
嶋﨑さんは、教員の皆さんによく、「もっとわがままでいいんじゃない」と言うそうです。
ぼくも教員をしてる友だちを見ると、同じように思います。
そんな嶋﨑さんの言葉の中でも、ぼくが好きなものがこれ。
長い時間働くことが許されちゃってるけど、それはむしろ社会悪。生徒に長時間労働を是とする感覚を植え付けてしまう。根性論で長い時間頑張るという人間を要請することになる。
—p106
子どもは教員の姿を見て学びます。
世代を超えてそういう労働への意識が伝達されていくのですね。
教育が壊れるか、教師が壊れるか
ここまでずっと自分なりにタイトルを付けてまとめていたのですが、このタイトルは問題を端的に表していたので、拝借してきました。
もう1人の弁護士松丸さんは言います。
「残業するという法的な定めがないのだから、残業しないようにしましょう」ということを言うのは、法律としては正しい。だけどそれをやっちゃうと、教育現場がどうなってしまうか。
— p117
本当にそうですよね。
教員の人たちもよく言います。
「早く帰れるもんなら帰ってるわ!」と。
早く帰りたくても帰れない事情があるのです。
仕事を早く切り上げてしまえば、学校が回らなくなることが目に見えているからです。定時で上がったら、次の日の仕事すら上手く回るか分からない世界のようですね。
その親切心のようなもので回っている学校ですが、そんな大きな労働力をただで手に入れられるわけもなく、教員の先生方は、代償を払っています。
それが教員の健康です。
そういう現状のことを、教育が壊れるか、教師が壊れるかと表現しているわけです。
教員の人の中には死ぬ気で働くという方もおられると思いますが、ぼくはごめんです。
大切な人が壊れていくのも見たいわけがありません。
第5章:現職教員が動き出した!
最終章であるこの章は、現職審議会*1の斉藤ひでみさんによって書かれています。
現職審議会は設立に際して、今後中教審で議論してほしい「現場教員が抱える5つの問題」を発表したらしいのですが、その5つの問題が簡潔でいて、とても納得できたので、そのままご紹介したいと思います。
- 授業を準備する時間がありません
- 休憩時間がありません
- 年間1兆円もの不払い残業があります
- 意に反して部活の顧問が強制されます
- 労務管理が機能していません
どれも、現場の先生方からよく聞く話です。この記事でも前半と後半にわたり、話題にしてきました。
また、これ以上書くと長くなりすぎるので割愛しますが、本書には上の5つについて、解決案も書かれています。ぜひそちらは実際に読んでみてください。
斉藤さんは1年ほど前に記者会見して、世間に現職教員の声を訴えたそうです。(Youtubeに映像があったので貼っておきます。)
このほか、主にTwitter等のSNSで活動を広げているそうです。
教員の仕事を続けながら、現職審議会の活動もされていて、本当にすごい方です。
ぼくはこの方のように、現場で働いているわけではないので、言えることも限られてきますが、逆に現場にいないからこそ見えてくるものも必ずあると思っています。
自分にしかできないことを探して、奮闘中です。
とりあえず、このブログもう少し頑張ります。
今回もここまで読んで頂きありがとうございます。
寒くなってきたので、お身体に気をつけてお過ごしください。
*1:2017年9月、中教審に対して、教員の長時間労働の根本問題について話し合ってほしいと訴えることを目的に設立。